群馬県立自然史博物館

第34回企画展 
 「BONES」
開催期間:2009年9月19日(土)〜11月23日(月)
開催場所:群馬県立自然史博物館

秋の学びのシーズンにあわせ、生き物が持つ骨には,どのような機能や働きがあるのかを細胞レベルから知り、骨から構成される骨格にはどのような役割があるかを知ることのできる企画展が群馬県立自然史博物館で9月19日(土)〜11月23日(月)の期間で開催されていた。
骨には、私たちの脳や内臓などのソフトパーツを守り身体を支える、カルシウムを蓄える、血液をつくるなどの働きがある。
また、骨・骨格の形には,陸・海・空と、異なる生活圏に生息する動物の間で多くの違いがみられることなど、今回の展示では,脊椎動物の中でも特に哺乳類にスポットがあてられていた。
今回の企画展では、単に骨格や剥製を並べて展示するだけではなく、陸・海・空に生活する哺乳類の骨格のつくりや仕組みを,パネル解説や、観察コーナー、体験コーナーなどにより具体的に関連づけてみられるような構成になっていた。


会場入口全景

大型動物の交連骨格標本では、アフリカゾウ,クロサイ(所蔵:国立科学博物館)、カバ(所蔵:国立科学博物館)などが展示されていた。また、オオアリクイ(所蔵:国立科学博物館)は骨格と剥製の両方が展示され、動物の姿とその骨格の構造がどのようになっているかを見ることができた。
そのほか、空をとぶインドオオコウモリ(所蔵:国立科学博物館)の骨格と剥製、海でくらすマナティ(所蔵:神奈川県立生命の星・地球博物館)やコマッコウの骨格なども展示されていた。

また、私たちの身体を支えている骨について学ぶコーナーでは、群馬県立自然史博物館が収蔵している実物のヒト交連骨格標本、胎児期から成人までの15体が10年ぶりに展示されヒトの骨の成長過程をみることができた。

博物館のエントランスにはレッドとブルーに染色されたきれいな原島広至氏作成の二重染色透明標本も展示され、多くの博物館、個人、そして動物園、企業、大学の研究者の方々などの力が結集し企画展に訪れた方々の知的好奇心を刺激する展示だった。

それでは展示を見ていこう。

企画展へとつながるプレ展示

常設展示と企画展会場入口の間には、企画展開催前から展示されているミニ展示がある。これが、常設展から企画展へとスムーズにつながる役割を果たしている。

まずはキリンの骨格標本だ、常設展示時にはなかったが、企画展にあわせ、キリンの頸椎の下には番号がつけられていた。キリンの首は長くても、頸椎は7つであることを実際に確認し、どのような構造になっている(どのようにつながっているのか)をみることができる。


企画展入口前にあるプレ展示

頸骨の下には番号がつけられている

その横にはゾウの頭骨の骨格が展示され、鼻の中には骨がないことが解説されていた。展示されていたのは映画化された小説「沈まぬ太陽」の主人公のモデルである小倉寛太郎氏が作製した貴重なアフリカゾウの標本だ。

次に、ゾウのように大きな頭骨もつ生き物の骨はどうなっているか構造を見ることができる展示がされていた。
ここでは頭骨の断面がみられる標本が展示されており、キリンと違って蜂の巣構造で空洞化し機能的にも軽量化されていることが説明されていた。

ゾウの反対側には、イヌ科のシべリアンハスキーやタテナガオオカミなどの頭骨標本が並べられていた。ここでは、イヌやオオカミの大きさ・形など頭骨から見られる相違点がポイントになっている。


アフリカゾウの頭骨

蜂の巣構造のゾウの頭骨(所蔵:国立科学博物館・高子)

また子供の目線で、より骨格を理解してもらうためにプレリードックの剥製標本と骨格標本が並べられていた。これは、剥製と骨格とを並べ、身体の中には骨があることを印象付けしている。


イヌとオオカミの頭骨

プレリードックの剥製標本と骨格標本

展示室入口ゲート横では、オハイオ大学のウィットマー博士の研究室が取り組んでいる恐竜や現生動物のCTスキャン・データがプロジェクターで映写されていた。比較解剖学的な分析を元に、骨格から肉付けをしていく動画が本邦初公開となった。また、本展示のために作成された(株)NTSの動く骨格アニメーションも挿入されている。

1 骨と骨格

骨のある動物たちを知るコーナー

入口のゲートをくぐるとまず初めに「骨のある動物たち」のコーナーがある。このコーナーでは、骨がある動物はどのようなものかが解説され、入口付近のスライドでは脊椎動物が登場するまでのストーリーがスライドで紹介されている。

それでは展示されているものを順に見ていこう。まずは、陰茎骨コレクション。ラッコの骨格標本とともにいろいろな動物の陰茎骨をみることができる。


ラッコの交連骨格標本と陰茎骨コレクション

入口を入るとスライド展示がある(左)

また、今回の企画展示では、ワークシートがつくられポイントを確かめ学びながら展示を楽しむことができるようになっている。各コーナーにあるワークシートをまとめると1つの冊子になり最終的には冊子にして持ち帰ることができるものだ。

これは今回の展示を通して「あ!こうだったの」と何かをつかんで帰ってほしいという担当された先生方の思いがこめられている
また、骨のある動物、ない動物はどれだろうという展示では、まず骨のある鳥類や哺乳類などの骨格標本が並べられていた。

2 外骨格と内骨格

骨格の解説では、体内にリン酸カルシウムなどを主体とする骨を持つ内骨格を持った魚類や哺乳類などの生き物。また体表面に炭酸カルシウムなどを主体とする殻をもつ外骨格の昆虫類や甲殻類。そのほか貝の貝殻は外骨格ではないことが解説され、それぞれ特徴のある生き物の骨格標本と剥製標本が展示されている。


骨のある生き物

内骨格・外骨格・貝の比較

内骨格の解説では身近な動物のネコやネズミ、ヘビなどの交連骨格標本があった。内骨格に対比して外骨格ではカメの甲羅は実は肋骨で、肋骨が広がりつながって甲羅になっていることが解説されている。

また、卵の中に入っているとき初めは肩甲骨が肋骨の外にあるのだが成長にともなって徐々に移動し甲羅の中に納まる仕組みがパネル解説されている。
またここまでの展示を整理し、内骨格、外骨格、貝殻など間違えやすいもののそれぞれの標本が並べられ比較することができる。

3 骨の機能

通路の反対側には骨とはどのようなものか、骨のつくりや骨と骨をつなぐ仕組みなどが解説されていた。ここでは、骨を触ったことがない人のために本物の骨を触れることができる。また、顕微鏡で骨の組織を観察するコーナーもある。
映像展示では、骨をつくる細胞が動いている映像を見ることができた。
ここまでのコーナーでは骨とはなにか基本的なポイントについて解説されていた。


骨のつくりを解説

骨の横断面をさわれるコーナー

4 成長する骨

ここでは骨の名前についてとの解説と、骨は成長するということがテーマになっている。
解説では骨が成長する骨化に関する展示解説がされていた。骨化に関しては、軟骨が骨組織に置き換わる「置換骨」と、膜の中で骨芽細胞が増殖して骨になる「膜性骨」の2通りあることが説明されていた。

解説パネルの下にはツキノワグマの珍しい生後2〜3週間のツキノワグマの交連骨格標本と剥製標本が展示されていた。そして次に私たちの骨はどうなっているんだろうという話につながっていく。

今回の企画展では、人体の非常に貴重な胎児から25歳までの15体の骨の標本が1列に並べられている。この展示では頭の突端の置換骨の状況をたどって見ていくことでどのように骨が成長していくかを知ることができる。


生後2〜3週間のツキノワグマ

成長する骨を解説

また、子供と大人の骨の数の違いでは、子供は非常に多く分解していて、成長するにしたがい骨化してくことを知ることができる。また骨化には固体差があるので骨の数は一般的には成人で206個あるといわれているが、若干のバラつきがあるといわれているということも解説されていた。


3ヶ月の胎児から成人まで15人分のヒトの交連骨格標本

今回の展示では10年ぶりにすべての人骨コレクションが展示された。
ヒトの交連骨格標本の展示のまえでは、多くのご家族連れが自分の身体と比較し、じっくりと見られていたのが印象的だった。

5 身体を支える骨格

骨格のさまざまな働きを次からは知ることができる。
まずは身体を支える骨格の話だ。ここでは骨と筋との関係についても触れられている。


4本の足で体を支える解説展示

ヒトとの比較も

身体を支える

このコーナーでは、「身体を支える」について4本足の動物と2本足で支える動物との違いに触れながら身体を支えることについて説明されている。この両者では体重移動が違う。4本足の場合は頭を上げる必要があるために多くの筋肉がかかわっている。


進化する脳を紹介する展示

ヒト、ゴリラ、チンパンジーの標本が並んでいる

しかし霊長類の中でも、4本足で動いている動物の場合はこのようにはならない、それは大脳の位地が違うからなのだそうだ。

6 骨の機能

脳を守る

軽くて大きな人の頭骨の説明にはヒトとゴリラとチンパンジーの交連骨格標本が並べられ頭蓋骨の違いを比較することができる。

頭蓋骨の骨組みの構成には脳を保護する脳頭蓋と顔面当蓋(内臓頭蓋)の2つから構成され、人の頭蓋骨が他の動物に比べ大きく丸い特徴がある。

脳を外部の衝撃から守る頭骨の働きが大脳と小脳の位置関係とともに解説展示されていた。ここでは頭蓋骨を構成する骨のパーツがわかるように各骨が分離した状態での標本が並べられていた。ちなみに人の頭蓋骨は28個の骨でできておりそれぞれの骨の外縁が凹凸になり組みあがっているとのことだ。


脳を守る展示解説

ヒトの頭骨を構成する骨を紹介した展示(右)

ツキノワグマの脳と頭骨の凍結乾燥標本も比較のために展示されていた。

ダンボール状の構造をしたキリンの頭蓋骨

キリンの頭蓋骨は長い首にある頭を軽くするために骨の内部がダンボール紙のように、空洞が多い構造になっていることが解説され、キリンの頭蓋骨の断面を知る標本が展示されていた。動物によって頭蓋骨がそれぞれ違うことを知ることができる。

内臓を守る骨の解説展示

キリンの頭の構造を知る標本(所蔵:国立科学博物館)

内臓を守る

内臓を守るものに胸郭がある。解説では、胸郭とは柱となる胸椎と、肋骨、肋軟骨、胸骨からできている骨の籠であることが説明され心臓や肺などを守っていることが説明されていた。
また横隔膜についても、横隔膜とその胸郭との組み合わせによってうまく呼吸ができていることが解説され解剖をしたクマの横隔膜を写した写真が展示されている。

骨の役割

骨の役割として、血液をつくる造血についても解説されている。
ここでは骨の中でつくられる造血について、血液の成分となる血漿、赤血球や白血球、リンパ球、血小板などの血球系の細胞が骨髄に含まれる造血幹細胞でつくられていることがパネルで解説されていた。その下にはニホンジカ、ツキノワグマ、ブタの骨髄の横断面標本が並べられていた。


この章では、骨には生命を維持する役割があり、それは他の動物にも共通していることを知ることができる。しかし、多様な環境下では「食べる」や「飛ぶ・跳ぶ」といった、動物の行動の役割は種により大きく違いが存在する。次の章からはこの身体の違いについて語られていた。

7 動く骨格

多様な生活環境によってからだの役割は違う。また、何を食べているかによってもその違いを見ることができる。また、聴覚や嗅覚、視覚などの感覚器官も動物によって形状や構造はまちまちである。
これからのコーナーではそれらの違いを「食べる」「きく」「みる」など動詞をキーワードに解説展示されている。

食べる

「食べる」をキーワードにした展示では、3Dプリンタによって色分け出力された模型から骨と筋の関係を知ることができる。
今回の展示で使用されているこの模型は(株)NTSが製作したもので、会場には使用された3Dプリンタも展示されていた。会期中には3Dプリンタを使用したデモンストレーションも行われていた。

3Dプリンタは、スキャンしたデータさえあれば色をつけ出力することができるもので色分けされたパーツはとてもわかりやすい。展示されているものは0.1mmの石膏を積層し、6〜7時間かかかって制作されたものだそうだ。ここでは、あごを動かす筋と骨を色分けし見ることができる。


3Dプリンタで骨と筋が色分けされた模型

イノシシやムササビなどの歯を見ることができる

また、食べ物の違いが、頭の形状や歯の形状の違いに見られるが、ここでは肉や草など食べ物が違う生き物の歯の形状がどう違うのか、また特殊な形状をした生き物の「食べる」について知ることができる。

肉を切り裂く


まず肉を切り裂き、噛み砕く肉食動物の歯が展示されている。ここではネコ科に特徴的な裂肉歯についての解説がある。
標本からは歯が非常にシャープで、顎関節ががっちりとはまっていることがわかる。顎関節が噛み砕くときにはずれないようになっている。


肉食のライオンなどを解説した展示

鋭い牙が際立つシベリアトラ(右)


草を食べる動物

一方で草食動物の場合は消化しやすくするため、効率よく植物を壊して噛み砕きやすい形状になっている。中でもヤギは形が違い特殊化しており、臼歯は洗濯板のようになっている。また、うしろあごは自由に動かすことができるので、食べているときに正面からみるとあごは円を描くように動かし餌をすりつぶすように食べるそうだ。


草や葉をつりつぶす草食の生き物

洗濯板のような臼歯をもつバイソン(左)

また牛の場合は舌で餌となる草を巻きつけ食べるので比較的丈の長いものでも食べることができる。それに比べ、ウマの場合は非常に背丈の低い草が生えている草原などで草を摘み取って食べるために、歯には草を切り取る機能をもっていることが説明されていた。実際に展示物からもその違いを知ることができる。

肉や草を食べる

あとは雑食だ。なんでも食べる動物で、ヒトやサルもこれらの種類に入る。特にサルは果実や木の実を食べ、イノシシもそうだ。これらの動物は形の違う大臼歯と小臼歯をもち、小臼歯は典型的な切断機能を持ち尖った形をしている。また大臼歯はすりつぶしに適した臼型になっていることが解説されていた。これは前方の歯は切断、そしてうしろですりつぶしして食べるため複雑な形をしている。


 肉や草を食べる生き物

ヒト(右)とイボイノシシ(左)などが比較できる

食べるシーンを映像で

会場では実際に動物が食べ物を食べる映像がながされていた。草食動物が、食べるシーンや、肉食動物のライオン、ホワイトタイガーが食料を食べるシーンなど群馬サファリパーク協力の迫力ある映像がながされていた。実際に食べているシーンを見ることであごがどのように動いているのか確認することができる。

昆虫を食べる・アリクイと歯をうしなったヒゲクジラ

また、中には特殊化している動物もいる。ここではアリクイとヒゲクジラが紹介されていた。アリクイはオチョボ口で舌の中には軟骨が一本入っていて、うまくあごの関節を調整することで舌を出し入れしている。舌の先端がねばねばしていているので、それに餌となるアリをつけ食べている。そのためアリクイには、歯がある必要がなく特殊化しているのだそうだ。

オオアリクイの標本(所蔵:国立科学博物館)

特殊なヒゲクジラの顎の構造
(所蔵:神奈川県立生命の星・地球博物館)

あとはヒゲを使い餌を食べるヒゲクジラだ。餌の入っている海水を取り込み、ヒゲを使って水分だけをながしこしとる。そのため他の動物とかなり形状が違う。

生活環境に多様化した感覚器官

きく

動物の頭部にはその生息環境や特長により感覚器官には違いがある。ここからのコーナーでは動物の感覚器官についての解説が「きく」、「みる」、「かぐ」、などをテーマに知ることができる。

まず「きく」だが、耳の内耳などその構造を見ることはとても難ししい。ここでは感覚器の動画(日本スリービー・サイエンティフィック株式会社)と3Dプリンタでその構造を見ることができる。また、その横には人の小さな耳小骨が展示されている。また耳の大きさによって周音効果が違い、ネコやイヌは外耳の穴や鼓膜が大きく、非常に聞き取りやすい形状をしていることが解説されていた。


感覚器官のコーナーでは映像(日本スリービー・サイエンティフィック株式会社)も展示されている

イヌ科のフェネックの標本
(所蔵:神奈川県立生命の星・地球博物館)

耳が大きなイヌ科のフェネックの骨格標本と剥製標本が並べれられ展示されている。耳には骨がないことがわかる。

みる

「みる」については、動物によって視野が違うことにスポットをあてて解説されていた。目が前に向いていれば立体視重視であり、横に向いていれば全体を見やすくなる。これは生活環境によって違う。そして目を動かすためには筋肉眼球を四方で調整し動かすことが説明されている。


「みる」の解説展示

骨と筋の関係がわかる

かぐ

そして次は「かぐ」だ。ここでは動物が嗅覚重視なのか視覚重視なのかによって鼻の構造が違うことが解説されていた。

ここでも3Dプリンタで出力された模型が用いられどのような構造になっているかを知ることができる。これを見ると嗅覚を感じる嗅神経の位置が鼻の奥でにおいを嗅いでいることがわかる。このように3Dプリンタは色分けされているのでイメージしやすい。


「かぐ」の解説展示

展示パネルには詳細なイラストがありとても理解しやすい

8 多様化した生き物の形態


次に動物には多様化したさまざまな形態があることを紹介している。ここからは「はしる」「とぶ」「およぐ」といった動物の移動方法と骨格の関係が解説がされている。
また基本的に共通した骨格を持つ哺乳類が陸や海や空でどのような違いがあるかについても触れられている。

あるく・はしる

長距離ランナーに適応したシカやウマ 

まずここでは、奇蹄目や偶蹄目といった指の数によって違う動物の特徴を「あるく」・「はしる」をポイントに解説されている。まず一本指の動物たちは基本的に上部に多くの筋肉がつき末端には筋肉はなく、腱が動くことであまりエネルギーを使わなくても長距離をはしることができる構造になっていることが解説され、ウマやポニーなどの交連骨格標本が並べられていた。


運動機能の多様化と骨の形を紹介した展示

一本指の動物ウマやポニー


2本の指で身体を支える動物ではニホンジカやブロングローンなどの交連骨格標本とともにその特性の解説がされている。また、ニホンジカの筋のつき方を知る凍結乾燥標本も展示されおり、足の繰り出しに無駄がなく効率的である構造であることが解説されていた。

ニホンジカの筋のつき方を知る凍結乾燥標本

2本指のニホンジカ


どっしりした身体を動かすサイやカバ

軽やかに動く動物がいる一方でどっしりした動物がいる。そのどっしりした身体を動かすにはしっかりした足腰がないといけない。ここでは巨体を支える動物としてカバが展示されている。展示されている2体は国立科学博物館からの資料だそうだ。しっかり4本の指で安定的に支え、四肢は太く短く頑丈な骨組みになっており、太くて長い尺骨が特徴的である。


巨体を支える動物ではカバ(所蔵:国立科学博物館)が展示されている

3本の指で支える動物ではサイ(所蔵:国立科学博物館)が展示

また前肢が4本、後肢が3本の指を持つマレーバクの交連骨格標本と剥製標本が並べられ展示されている。
解説では、前肢の骨組みはカバに似ているが、前肢が後肢よりも長く、第3指が発達していることが説明されていた。

5本の指で支えるゾウ


5本指で支える動物のアフリカゾウ(群馬サファリ提供)

前肢が4本、後肢が3本の指を持つマレーバク(所蔵:国立科学博物館 前)

骨格標本と剥製標本を並べる意味

今回の企画展では多くの骨格標本と剥製標本とが並べられている。これは、骨格標本だけではわからない生きた状態での姿を、剥製標本によって、実際の姿がどういうものであるかをよりイメージしやすくしたものだ。また、このように標本が並べられないものに関しては解説パネルに姿がわかる写真を見ることができるようになっている。

ぶらさがる ナマケモノ

ここでは、3本の指で木にぶらさがるナマケモノについて解説と交連骨格標本が展示されている。ナマケモノには2本指と3本指がいるがその椎骨の形も違っているそうだ。ナマケモノは非常に省エネな動物で少量しか食べずあまり動かない。また指でぶらさがる生態をもっていることで尻尾がないのも特徴だそうだ。

ぶらさがるナマケモノ(所蔵:国立科学博物館)

前肢の指には大きな爪があることがわかる

短距離スプリンターのチーターやヒョウ

短距離スプリンターではヒョウやチーターが展示されている。草食に対して肉食という対比にもなっている。チーター、ヒョウ、ユキヒョウは、速くはしるために足の構造に特徴がある。大地を蹴り上げる指を動かすための筋肉が必要になり複雑な形をしているのだそうだ。腰はしなやかに曲がるような仕組みになっていて、頭の大きさが他の動物と違うことがわかる。


さまざまな動物の骨格の違いを比較できる

ユキヒョウ(所蔵:国立科学博物館)の標本


第6の手をもつクマ


ジャイアントパンダ(所蔵:国立科学博物館)(左)ツキノワグマ(中)ヒグマ(右)の標本が並んでいる展示

クマを紹介した展示では、ヒグマ、ツキノワグマ、ジャイアントパンダの標本が並べられている。ここではツキノワグマの複雑な手について手足の指の間には細かな筋肉がついていることで指を器用に動かすことができることが解説されていた。展示ではツキノワグマの右前肢の凍結乾燥標本が展示されその細かな筋肉が実際に見られた。

ツキノワグマ(左)ヒグマ(右)

貴重なジャイアントパンダの標本(所蔵:国立科学博物館)

その横には貴重なジャイアントパンダの剥製標本と交連骨格標本が並べられている。この標本は以前上野動物園で飼育されていたリンリンだ。ジャイアントパンダの場合、手の骨が発達し竹を抑え支えになるよう第6の指、第7の指と呼ばれる骨をうまく使っていることが解説されている。また同じクマの仲間ではあるが食べるものの違いから、頭の形に違いがあることがわかる。ただ構造的には同じクマなのであまり変わらないとのことだ。

「飛ぶ・滑空する」生き物 


「飛ぶ・滑空する」生き物ではコウモリなどを展示

モモンガ(左)ムササビ(右)


ここでは「とぶ」生き物のムササビやコウモリの骨格の構造を知ることができた。


「およぐ」生き物 

次は「およぐ」生き物として、クジラやコマッコウなどが展示されどのような構造をしてどのように泳ぐことができるのか、その違いを知ることができる。


ゴマフアザラシの指を確認することも(所蔵:神奈川県立生命の星・地球博物館 左)

鰭脚類の泳ぎ方の解説とアメリカマナティー(所蔵:神奈川県立生命の星・地球博物館)

このコーナーではクジラの泳ぐ映像を見ることができ、実際にどのように泳いでいるのか動物による違いを知ることができる。またヒレを使うもの、お尻を使いお泳ぐものなど動物によりその特徴を骨格から見ることができる。会場ではゴマフアザラシの尻尾がどこにあるのか骨格から確認できる。また見分けがつきにくい指も5本あることがわかった。


クジラ類の泳ぎ方の解説とコマッコウ

アメリカマナティーの頭蓋(所蔵:神奈川県立生命の星・地球博物館)


同じ海に生息するコマッコウとクジラ、マナティだが、頭や歯の違いが比較展示されている。

9 体験コーナー

企画展の体験コーナーには腕の動きを体験する模型や関節の動きと仕組みを動かしながら学べる模型が解説とともに並べられていた。


体験コーナー

体験コーナーでは関節の動きを模型で確認することができる

10 ルーツをたどる原始的な哺乳類

展示を締めくくる展示として、「もとはひとつのルーツ」の展示がある。ここでは原始的な哺乳類のモルガヌコドン類が解説展示されている。
今回展示されている現生種の哺乳類がネズミのようなものから派生していることを解説したものだ。これは、初期の哺乳類を知り比較することでどれほど現生種の哺乳類が多様化してきたか垣間見ることができる。


展示の最後には原始的な哺乳類について解説

モルガヌコドン類の模型


11 今回の企画展を担当されましたお一人で群馬県立自然史博物館の姉崎智子先生に今回の展示のポイントをお聞きしました。

---展示のコンセプトにたいして


「全体のストーリーをつくってから展示を構築しています。そのストーリーの中で、ご来館下さいましたお客様が関心をもってじっくりご覧いただける箇所があったら良いと思っています。」

「他の担当者とも打ち合わせを重ね、「自分と比較して他の動物の構造についてみてみよう」というのを基本のコンセプトとして設定しました。展示の中で興味を惹かれる箇所はお客様それぞれでも、展示を見終わった後に、これがわかっておもしろかったといっていただけるとうれしいです。」


ジャイアントパンの前では会話もはずんでいた

透明標本も展示され身体の中を見ることができる(所蔵:原島広至氏)


---展示の最後では初期の哺乳類のモルガヌコドン類を紹介されていますが、展示の最後に時代をさかのぼる展示をされたことにたいしては。

「最後のシメをどうするか、というのは担当間で悩んだ点です。」

「しかし、もともとは1つのルーツからはじまった,という形でしめることにしました。」


今回展示・使用された3Dプリンタ((株)NTS所蔵)

観察コーナーでは熱心に観察する人がいた

---ご来館いただいた方々の反応について

「ご来館者いただいたお客様の中には、さまざまな質問やご意見をいただきました。なかには「頭の骨の数は28個じゃない?」という方もいました。」
「また、「僕の腰椎の骨は一個多いんだよ」という方もいらっしゃいましたね。」
「そのほかパンダについての質問では、「普段はどこに収蔵されているの?」などですね。ほかにも「頭の中はどうなっているの?」などや、「臓器はどうなっているの?」などですね。」


人間の交連骨格標本の前には多くの人が

会場内には観察コーナーが設置されている


「展示を身近なものとしてとらえ、自分に引きつけてご覧下さったお客様が多かったということで、皆様の知的好奇心を少しでも刺激することができたとしたら、幸いです。」

と締めくくっていただいた。ご協力頂きありがとうございました。


12 自然教室  「骨をならべて動物の骨格をしらべよう」

企画展にあわせ展示に関連した自然教室が開催されている。企画展では紹介できないポイントを実際に骨格や標本を使い体験しながら学ぶワークショップは毎回多くの方が応募する人気のイベントだ。今回の企画展でも数回自然教室が開催された。その中から「骨をならべて動物の骨格をしらべよう」とタイトルのついた自然教室を取材できたのでレポートしていこう。

今回取材した自然教室では資料の関係から参加者20人でおこなわれた。時間は2時間のプログラムだ。

まず初めに今回の自然教室を担当される先生方の紹介と注意事項の説明があったあと、作業が進められていく。


今回使用する骨の資料

先生方の紹介のあと注意事項の説明


資料を確認しながら作業を進めていく。

配られた骨格の資料には、1袋の中にアライグマの骨格が1体分つめられている。
また、会場では素手で触るのを躊躇されたり臭いが気になる方のために手袋とマスクがサイズごとに準備されていた。

また机の上には白いボードがあり、その上に骨を並べていく。
作業中に椎骨が転がる恐れがあるのでそれを抑える細長い棒、それと細かな骨をつまむピンセットが用意されている。
そして、わからなくなったときのために組み立てられた参考用の骨格が机のまわりにおかれていた。


参考にする骨格標本

骨を1つ1つ確認しながらいよいよスタート

注意点の説明が終わったらいよいよ作業スタート。


わからないときには骨をあわせて確認

先生方がテーブルを回ってマンツーマンで説明


パーツを確認ながら作業を進める

まずは椎骨を並べる作業から

作業の合間には今回使用した骨格標本についての説明があったので紹介しておこう。

「今回使用するアライグマについての説明をします。このアライグマは特定外来種です。」

「日本列島にはいてはいけないといわれている動物です。群馬県では、現在、県西部を中心に分布を拡大しています。」

「当館では、県内で捕獲された個体を全頭回収して分析をしています。分析結果は,このように骨になった個体と一緒に収蔵されます。」
「ここに番号がありますがVN09であればVNが哺乳類をあらわすもので、09は2009年をあらわしそのあとの番号が何体目の個体ですよということをあらわしています。」

との説明があった。


グルーガンを使って骨を固定していく

説明書を見ながら手と足を組み合わせていく

終了10分前に冷めるのに時間がかかるグルーガンの電源を抜いてくださいとの注意がなされ、終了5分前には片付けが始まった。

最後に

「ここでつくられたものは持ち帰ることはできませんが。また博物館の資料として使わせていただきます。また博物館ではこのようなイベントをおこなっていきますので是非参加ください。」

と締めくくられ参加者全員で大きな拍手が先生方に送られ終了した。
参加者の多くはすべての骨格を組み合わせることはできなかったかが一様に満足した様子が伺えた。

群馬県立自然史博物館には10年以上通い続けていらっしゃる群馬県伊勢崎市の倉金さん親子にお話をお聞きしました。

「開館して半年ぐらいから来るようになって、いまも多くの博物館のイベントには親子で参加しています。」
「ナイトミュージアムとかですね。」
「今回の情報は博物館の友の会というのがあるんですけれどもそこからチラシを送られてくるので知りました。」
「今回の自然教室の感想は、骨を組み立てるのは難しかったけれども、動物の骨の仕組みがわかって面白かったです。」

とお聞かせいただいた。

企画展の感想では


取材にご協力いただきました倉金さん親子


「印象に残ったのは人間の骨が並べんでいるところに興味がありました。」
「それと動物によって指の本数が違ったたりしたこと、ウマは話を聞いたことがあるけれど、サイなどは知らなかったので初めて知って面白かったです。」
「今後も何度も来ていろんなことを吸収していきたいと思いました。」

と語っていただいた。

ご協力いただきありがとうございました。

最後に今回の取材にご協力頂きました姉崎智子先生、企画展に関われた皆様に心よりお礼申し上げます。

群馬県立自然史博物館では3月13日〜5月5日まで企画展「むし虫ウォッチング」が開催。

第34回企画展 
「BONES」

開催期間:2009年9月19日〜11月23日

開館時間:午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30まで)

詳しい休館日については直接お問い合わせ下さい。

観覧料:一般/700円(560円)・高校・大学生400円(320円)・中学生以下無料(※( )は20名以上の団体料金です)

お問い合わせ 群馬県立自然史博物館  電話 0274-60-1200

この内容については、群馬県立自然史博物館の協力を得て掲載しています。
展示資料