群馬県立自然史博物館

「群馬のワシ・タカとその仲間たち」 
展示レポート


開催期間:2009124日(土)〜215日(日)
開催場所:群馬県立自然史博物館

2009124日〜215日の期間、群馬県立自然史博物館にて「群馬のワシ・タカとその仲間たち」展が開催されていた。あいにくもう終了してしまったが、その時の模様をレポートしていこう。今回の展示のテーマはそのタイトルのとおり、ワシ・タカなど猛禽類をテーマに生態をわかりやすく展示すること。中には、オオタカの筋肉と骨格がわかる標本なども並べられ形の違いを知るだけではなく行動のメカニズムも知ることができるようになっている。群馬県には26種の猛禽類が確認されているようだが、今回の展示では、20種類40体に及ぶ標本が並べられ見ることができた。なお、展示されていた標本は、群馬県安中市にある「小根山森林公園・野鳥の森」と群馬県立自然史博物館の所蔵標本とのことであった。


展示会場入り口

会場全景

1 群馬県下の猛禽類

それでは順に展示を見ていくことにしよう。企画展入り口は、群馬県立自然史博物館の企画展示室に向かう通路を利用し今回は展示されている。展示の構成は会場右の壁伝いに沿って生態写真、左側にパネルによる解説と関連した剥製標本が並べられている。 会場に入り時計方向に見ていくと群馬県下で確認が報告されている猛禽類の生態写真と合わせて11種類14体の剥製標本が並べられていた。中でもチョウゲンボウ、ノスリ、ハチクマ、は飛翔タイプの剥製で羽を広げた時の大きさを比較することができる。このほかにもハイタカ、オオタカ、ケアシノスリ、ミサゴ、オオコノハズク、チゴハヤブサ、サシバ、ツミ、ハヤブサなどがあり、足や色の違いなどをここでしっかり確認し、次のコーナーを見ていくとより理解しやすい。



群馬県の猛禽類をわかりやすく展示

飛翔型チョウゲンボウの剥製

ノスリ

2 猛禽類の生態を知る

次のコーナーでは、猛禽類の生態を特徴ごとに分け解説されている。まずは昼と夜の違いによる分類を解説。昼に活動する猛禽類を視覚で獲物を探す優れたハンターとしてパネルで紹介。その脇にはトビ、ハイタカ、オオタカの剥製標本が展示されている。また、夜の猛禽類では、暗闇の中で獲物を捉える優れたハンターとして紹介。遠くの獲物を感度の良い耳と、顔の正面についている大きな両目を特徴として獲物のとり方などをパネル展示で解説されていた。
展示には、コミミズズク、アオバズク、オオコノハズク、コノハズク、ヨタカ、フクロウなど夜に活動する猛禽類が紹介されている。




昼の猛禽類解説






夜の猛禽類解説


3 越冬する猛禽類と生まれ育った地域で生きる猛禽類

各コーナー、猛禽類の生態を対比する形で展示されている。昼と夜、地域に留まるもの、留まらないものといった感じ。次のコーナーでは、この猛禽類の生活地域を「渡り」をキーワードに解説している。

渡りを行う猛禽類の特徴として秋に寒い地域から餌を求めて南下し越冬する(冬鳥)、春に南方から来て繁殖する(夏鳥)、夏は比較的高い山で暮らし、冬は平地で暮らす(漂鳥)などと解説し見ることできた。展示されていた剥製標本は大型のオオワシ、ハチクマの剥製標本が展示されている。対照的に生まれ育った地域で生きる渡りを行わない猛禽類として、クマタカやイヌワシを例えに、餌の確保が常にでき、安全な巣を確保できる豊かな環境を保たれることが生きていく上で必要として解説。クマタカが展示されている。





渡りの解説パネルとオオワシとハチクマ

 



生まれた地域を離れない猛禽類とクマタカ

4 獲物を捉えるメカニズム

猛禽類の食べものは、哺乳類、鳥類、魚類、両性類、などで食物連鎖におけるピラミッドの頂点に位置している。遠くから獲物を見つけ攻撃し捉え捕食するには丈夫な足やクチバシが必要である。次のコーナーでは、この点をポイントに獲物を捉える身体、翼をすばやく羽ばたかせるメカニズム、種類の違いによる爪やクチバシの違いを比較し見ることができた。
このほか、観察してみようと題されたコーナーには、フクロウの翼、フクロウの骨格標本、オオコノハズクの椎骨とオオタカの椎骨が拡大鏡で観察できるようになっていた。


コーナー風景

足とクチバシの違いを見る事ができる


気嚢(きのう)の解説と骨格標本

オオタカの筋と骨格を展示

5 オオタカの子育てから巣立ちまでの記録写真を展示

猛禽類の生態について解説された展示に向かい合って展示されていたのが、オオタカの子育てから巣立ちまでの成長過程をつづった記録写真だ。これは、森野洋一郎氏による「76日間のオオタカ子育て写真記録」から紹介されたもので54日の抱卵中の写真から76日間に渡る成長の記録を11枚の写真を使って紹介されていた。


写真展示コーナー

猛禽類の生態写真が並ぶ
6 最後に

ワシ・タカなどの猛禽類というと空高く優雅に飛んでいたり、森の奥深く高い木の上に巣を作っていたり、その姿を間近で見ることが難しいことで知られている。今回の展示では、猛禽類の生態写真、全体で20種類に及ぶ剥製標本、筋肉のメカニズムがわかる乾燥標本などで展示されており、猛禽類のことをあまり知らない人でもわかりやすく解説されていたのが特徴だ。また多くの猛禽類は絶滅危惧種に指定されている。今回の展示でも多くの絶滅危惧種が紹介されており、とても貴重な展示だったといえるだろう。また群馬県立自然史博物館では、第21回企画展「わかった!かわった?群馬の自然」が平成21年3月14日(土)から5月6日(水)まで開催される。この企画展では、研究機関としての側面を持つ博物館の調査・研究の成果も発表されるそうだ。「群馬のワシ・タカとその仲間たち」展とは違った展示も楽しみだ。

  展示されていた猛禽類たち


オオコナハズク

ツミ

コミミズク

ノスリ

ケアシノスリ

コノハズク

オオタカ

ミサゴ

チゴハヤブサ


ミニ企画展「群馬のワシ・タカとその仲間たち

会期:2009124日(土)〜215日(日

開館時間:午前930分〜午後5時(入館は午後430まで)
休館日は毎週月曜日

詳しい休館日については直接お問い合わせ下さい

お問い合わせ 群馬県立自然史博物館  電話 0274-60-1200

この内容については、群馬県立自然史博物館の協力を得て掲載しています。
展示資料