国立科学博物館 特別展
「鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」
レポート 開催期間024/11/2(土)~2025/2/24(月・振休)
国立科学博物館(東京・上野公園)にて特別展「鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」が2024/11/2(土)~2025/2/24(月・振休)の期間開催。同館で初めて鳥類をテーマにした大規模な展示だ。会場では、最新のゲノム解析に基づく研究成果をもとに、鳥類の進化や生態が解説されており、世界中の鳥類標本が一堂に会している。鳥類の多様性と奥深さを存分に堪能できる内容となっている。
見ごたえたっぷりの特別展だがポイントをまず初めに紹介しておこう。
圧巻の標本展示
本展では600点以上に及ぶ剥製や骨格標本が、最新の系統分類に基づいて展示されている。古生物学と現生鳥類の研究者が協力し、多様な鳥類の姿を解説。珍しい鳥や絶滅種を含む膨大な標本が集められ、鳥の進化の軌跡をたどることができる。貴重な種類の鳥を一度に見ることができる驚きの展示だ。

ゲノム解析で明かされる鳥の進化
「ハヤブサはタカよりもインコに近い?」「北半球と南半球で異なる系統の鳥が似た進化を遂げる理由とは?」など、ゲノム解析の進展により、従来の鳥類分類が大きく見直されている。本展では、分類学上の鳥類44目ごとに会場がレイアウトされ、最新の研究成果をもとに系統や生態の特徴が紹介されている。

特集展示と「鳥のひみつ」コーナー
分類展示とは別に、5つの「特集」と23の「鳥のひみつ」のコーナーで構成展示。「絶滅」「翼」「猛禽」「ペンギン」「フウチョウ」などのテーマ別展示では、それぞれの鳥の生態や進化の特徴が詳しく解説される。また、「鳥の雌雄産み分け」「鳥の方言や言語」「つがい外の関係性」「カッコウの托卵が宿主に与える影響」など、鳥の生態に関する興味深いトピックも充実。特に、美しい羽を持つフウチョウの標本が12種も展示され来館者の注目を集めていた。

史上最大の飛翔鳥「ペラゴルニス・サンデルシ」復元
約2600万年前に生息し、翼開長7mに達した「ペラゴルニス・サンデルシ」の復元モデルが展示されている。これは現存する最大の飛翔鳥であるワタリアホウドリ(翼開長約3.5m)の2倍の大きさを誇り、その迫力ある姿に圧倒される。会場では制作過程のビデオが流れ、その過程も見ることができた。
それでは順を追ってみていこう。

会場入ってすぐ「序章 鳥を知ろう」展示が始まる。鳥はヒトと多くの共通点を持つ生き物。視覚を通じて多くの情報を取り入れ、発達した色覚を持ち、異性にアピールするために美しく装い。多くの鳥は一夫一妻制で、夫婦協力して子育てを行う。声を使ってコミュニケーションをとる点も、私たちが鳥を身近に感じる理由。また、空を飛べることは私たちの憧れだ。最新の科学が解き明かした鳥の進化・生体・分類などを通して「鳥」を「知る」を特別展のテーマに読み取っていくと面白い。

特集 鳥類の絶滅:環境変化と人間活動の影響について
特集①では、鳥類の絶滅についての解説、鳥類は環境の変化に敏感であり、国際自然保護連合(IUCN)が指定する30,000種以上の絶滅危惧種のうち、約14%を鳥類が占めている。
○過去500年間で187種が絶滅
この間に187種の鳥が地球上から姿を消しました。
その約90%は島に生息していた鳥類であり、島の生態系が外部からの影響を受けやすいことを示しています。
○絶滅の主な原因
約50%:外来種(侵略的外来種)がもたらした影響
約25%:狩猟やペット取引のための捕獲
○日本における鳥類の絶滅
これまでに15種・亜種が日本国内で絶滅
そのうち11種は小笠原諸島や南西諸島での絶滅
島嶼(とうしょ)部の生態系は特に脆弱で、外来種や開発の影響を受けやすい
○課題として
鳥類の絶滅を防ぐためには、外来種対策や生息地の保全、違法な捕獲の防止が重要です。特に、島の生態系を守ることが、絶滅リスクを減らす鍵となる。


絶滅したキタタキと絶滅危惧種の鳥類が展示されていたので紹介しておこう。

国内で絶滅した幻の大型キツツキ・キタタキ
- クマゲラ属に属する大型のキツツキで、腹部が白いのが特徴。
- 対馬に生息していたが、1920年に採集された個体を最後に絶滅。
- 同じ亜種が朝鮮半島にも分布していたが、韓国でも絶滅したとされる。
- アジアに分布する他の亜種は体が小さく、明確に区別できる。
佐渡で復活する日本のシンボル・トキ
- 日本にちなんだ学名を持つ1属1種の鳥。
- 翼などは朱鷺色と呼ばれる美しい色だが、繁殖期には墨色の分泌物を体に塗り、目立たなくする習性がある。
- 乱獲や農薬の影響で減少し、2003年に日本産トキは絶滅。
- その後、中国からのトキを佐渡で野生復帰させる取り組みが行われ、2012年以降、野外での個体数が増加している。


復活しつつあるコウノトリ
- 日本のコウノトリは1971年に野生絶滅。
- 2005年から兵庫県豊岡市で再導入が開始され、成功を収める。
- 2023年までに放鳥拠点は5カ所、自然繁殖地は九州から関東まで26カ所に拡大。
- 湿地や水田の生物多様性を高める地域活動と連携しながら復活が進んでいる。
日本の代表的な絶滅危惧種とその脅威
- ライチョウ:温暖化の影響を最も強く受けている。
- オガサワラカワラヒワ:外来種の侵入や環境の変化による影響が大きい。
- ヤンバルクイナ:かつて外来種の影響を大きく受けていたが、捕食者の排除などの保全活動により状況が改善しつつある。

鳥類の進化と適応
鳥類は恐竜の子孫であり、飛行能力や羽毛、抱卵といった特徴はすでに恐竜時代に獲得されていた。本展では、化石記録をもとに鳥類の進化がどのように進んできたのかを詳しく解説。
鳥類の起源と進化の軌跡——恐竜から現生鳥類へ
また鳥類は、恐竜の一部である獣脚類から進化したと考えられている。現存する鳥の特徴である羽毛、飛行能力、抱卵といった要素は、すでに獣脚類恐竜の一部に見られていた。始祖鳥(アーケオプテリクス)をはじめとする化石記録をもとに、鳥類がどのように進化してきたのかが探られた。

鳥類の進化のプロセス
鳥類の祖先は、白亜紀以前から存在していた獣脚類恐竜の一部であり、そこから徐々に鳥類としての特徴を獲得していった。羽毛は恐竜の段階ですでに発達し、飛翔能力の向上とともに進化していったと考えられる。
鳥類の進化には、大きく以下の3つの要素が関与している。
鳥類の身体構造と適応の進化
骨格の特徴
鳥類の骨は中空構造を持ち、軽量かつ丈夫なつくりになっている。これは、飛翔に必要な軽さを確保しながら、強度を維持するための進化的適応だ。水中での生活に適応したペンギンのような鳥は、浮力を抑えるために骨が密に詰まっている点が特徴的である。
- 軽量化の進行
鳥類は、飛行に適応するために体の構造を軽量化した。歯を持たない嘴を発達させ、尾の骨格を縮小。翼や脚の骨は融合し、効率的な飛行が可能な形態へと変化していった。 - 重心の集中化
効率的な飛行には、安定した体の構造が不可欠だ。鳥類は、飛行筋の付着点となる竜骨突起を胸骨に発達させ、胸部に重心を集中させた。また、消化器官には砂肝(筋胃)を持ち、消化の効率を高めた。 - 体軸の固定化
空中での安定性を確保するため、鳥類の脊椎は胸部から尾部にかけて癒合。肋骨には鉤状突起があり、体全体の剛性を向上させている。これにより、飛行中のバランスが保たれ、空中での機動性が向上した。

飛行の進化と適応
鳥類の飛行能力は、滑空から始まり、羽ばたき飛行へと進化したと考えられる。翼竜やコウモリのように飛行を獲得した脊椎動物は他にも存在するが、鳥類の翼は独自の進化を遂げた。翼面を支える骨格の形状には大きな違いがあり、それぞれ異なる飛行スタイルを獲得している。
飛翔の進化と多様化
- 滑空から羽ばたき飛行への移行
- 骨格の軽量化と翼の発達
- 気嚢システムによる高効率な酸素供給
これらの進化の結果、鳥類は地球上のさまざまな環境に適応し、多種多様な生態を持つグループへと発展していった。



呼吸システムの発達
鳥類の呼吸器官には「気嚢」と呼ばれる独特の構造があり、一方向に空気を流すシステムを持っている。これにより、高い酸素供給能力を維持し、活発な飛行が可能になった。この特徴は、鳥類に近縁な恐竜にも見られ、飛翔能力の進化に大きく貢献していると考えられる。

羽毛の進化
羽毛は、鳥類の最も特徴的な要素の一つである。しかし、近年の化石研究により、恐竜の段階ですでに羽毛の原型が存在していたことが明らかになっている。初期の羽毛は単純な毛状の構造をしていたが、やがて分岐し、現在の風切羽のような機能的な構造へと発展した。羽毛は飛行のためだけでなく、保温やディスプレイ(求愛行動など)にも重要な役割を果たしたと考えられる。


鳥類の巣作りと抱卵の進化
多くの鳥類は巣を作り、卵を抱卵することで子を育てる。鳥類に近い獣脚類恐竜の一部にも、抱卵を行っていたと推測される化石が見つかっており、卵を温める行動は鳥類に特有のものではなく、恐竜時代から続く習性である可能性が高い。
一方、樹上での営巣は、鳥類が進化してから獲得されたと考えられる。巣の形態や繁殖戦略は多様であり、環境に適応する形で進化してきた。

鳥類の進化:飛行を可能にした骨格の変化
現生鳥類に至る進化の過程では、祖先的な鳥胸類(うきょうるい)において、飛行を支えるさまざまな特徴が発達しました。特に骨格の変化が顕著であり、以下のような進化が確認されている。
1. 飛行に関連する主な骨格の進化
- 竜骨突起の発達
- 胸骨に竜骨突起(きょうこつとっき)が形成され、胸筋の付着面が広がることで、強力な羽ばたきが可能になった。
- 手根中手骨の形成
- **手根骨(手首の骨)と中手骨(手の甲の骨)**が癒合し、手根中手骨が形成された。
- 第一指が発達し、小翼羽(しょうよくう)を支える役割を果たすようになった。
- 小翼羽は、翼の上にできる空気の乱流を防ぎ、低速飛行時の失速を防止する重要な構造である。
2. 飛行以外に関連する骨格の変化
- 中足骨の癒合
- 3本の中足骨(足の甲の骨)が一つに癒合し、脚の構造が強化された。
- 腹肋骨の消失
- 胸部を支えていた腹肋骨(ふくろっこつ)が失われ、より軽量化が進んだ。
- 骨盤の形状変化
- 左右の恥骨(ちこつ)が分かれて座骨(ざこつ)と平行になり、歩行や姿勢の安定性が向上した。
3. 祖先的な鳥類と現生鳥類の違い
- ヘスペロルニスやイクチオルニスなどの古代鳥類はまだ歯を持っていた。
- 歯の完全な消失はこれらの種が分岐した後に起こったと考えられる。
- 始祖鳥と現生鳥類の間には、骨格の形態に大きな違いがあり、進化の過程で飛行に適した特徴が徐々に獲得されていったことがわかる。
このように、鳥類の進化は飛行能力の向上とともに、軽量化と効率性を求めた骨格の変化を積み重ねてきたことが探られている。



鳥類の進化の意義は
鳥類の進化は、恐竜からの適応放散の過程を示す重要な例である。羽毛の獲得、骨格の軽量化、効率的な呼吸システムの進化、飛行能力の向上といった多くの要素が組み合わさり、現在の鳥類の多様性が生まれた。
また、巣作りや抱卵といった行動は、鳥類が子孫を残すために特化した戦略であり、恐竜時代から継承されている可能性が高い。これらの進化の過程を理解することで、鳥類の生態や行動の成り立ちをより深く知ることができる。
鳥類は、陸上、空、海とさまざまな環境に適応し、進化を続けてきた。最新の研究によって、鳥類の起源や進化の過程が明らかになりつつあり、今後さらなる発見が期待されている。

鳥類の系統分類の再編
ゲノム解析によって、鳥類の系統分類が見直されている。従来の分類では、ハヤブサはタカ目の一部とされていたが、遺伝子の比較により、実はインコやスズメに近いことが判明し、新たに「ハヤブサ目」として独立した。このように、DNA情報をもとに分類体系が再構築され、より正確な鳥類の進化の系譜が描かれるようになっている。
また、鳥類の「目(もく)」の数も、これまでの分類では23とされていたが、最新の研究によって44まで増加した。この変化は、ゲノム解析によって、種間の関係がより明確になったことによるものであるとされていた。

スズメ目の多様化とその要因
スズメ目は、鳥類全体の約3分の2を占める最大のグループであり、現在6,700種以上が確認されている。この多様化の要因として、以下のような進化的特徴が挙げられる。
- 発達した鳴管
スズメ目の鳥は、他の鳥類に比べて発達した鳴管を持ち、複雑なさえずりが可能である。この能力が、種の識別や求愛行動に影響を与え、多様な種の分化を促したと考えられている。 - 羽色や装飾羽の進化
鮮やかな羽色や独特の飾り羽を持つ種が多く、視覚的なアピールが繁殖の成功に影響を与えてきた。この結果、地域ごとに異なる特徴を持つ種が進化したと考えられる。 - 生態的ニッチの細分化
体の小型化により、スズメ目の鳥は多様な環境に適応し、食物資源の分割が進んだ。その結果、異なる生態系に適応した多くの種が生まれた。

地理的な影響
スズメ目の起源はニュージーランド周辺とされ、その後、東南アジアのスンダランドを経由して世界中へ分布を広げた。特に、漸新世(約3400万年前)の寒冷期には、スンダランドが出現し、これがユーラシアを通過しての新大陸やアフリカへの分散、漸新世の温暖期以降の多様な科の分化が特徴的である。
ゲノム解析による進化の再検証
ゲノム解析が進むにつれ、鳥類の進化に関する新たな発見が相次いでいる。化石から得られる情報は骨格などの形態的特徴に基づいており、遺伝情報の直接的な解析は難しい。しかし、現生種のDNAデータと形態情報を統合することで、過去の進化の過程をより正確に推定することが可能になってきた。
この研究手法では、以下のようなプロセスが用いられる。
- 形態的特徴の数値化
各種の骨格形態やサイズをデータ化し、比較可能な形質データとして整理する。 - 進化的な変化の解析
異なる種間でどのように形態が変化してきたかを分析し、最も合理的な系統樹を構築する。 - ゲノム情報との統合
現生種の遺伝情報と形態データを比較し、進化の道筋を明らかにする。
ゲノム解析によって
ゲノム解析によって、鳥類の進化の過程がこれまで以上に詳細に解明されつつある。特に、スズメ目の多様化やハヤブサ目の独立など、従来の分類体系を覆す発見が相次いでいる。今後の研究によって、新たな鳥類の系統関係や進化の謎がさらに明らかになっていくことが期待される。
第三章 走鳥類のなかま
ゲノム解析が明かす走鳥類の進化と多様性
鳥類は口蓋(口の上部の骨)の構造によって大きく「古口蓋類」と「新口蓋類」に分類される。この2つのグループは、中生代白亜紀の中頃に分岐し、それぞれ独自の進化を遂げた。現生の古口蓋類はわずか5目5科14属 59種しかおらず、新口蓋類と比べて0.5%の種数で著しく少ない。特に古口蓋類は、ダチョウやエミューなどの飛べない走鳥類だけではなく、飛翔力のあるシギダチョウ類も含む。
現生鳥類の中で比較的少数派に位置する。一方で、ゲノム解析の進展により、従来の分類が見直され、系統関係の詳細が明らかになってきた。本レポートでは、走鳥類の代表的なグループについて、最新の研究成果を交えながら紹介する。

01 ダチョウ目(Struthioniformes)— 最速の鳥の進化
ダチョウはアフリカ大陸に分布する走鳥類で、飛ぶことを完全に放棄し、速く走るための適応を遂げた鳥である。
ゲノム解析により、かつて1種とされていたダチョウが、アフリカ東部のソマリアからケニア中部にかけて見られる頭から首の羽毛がほとんどない「ソマリダチョウ」と遺伝的に異なることが判明し、現在では2種に分類されている。この分類の変化は、DNA解析が進化の過程をより正確に読み解く手助けをしている好例である。
また、ダチョウの足は2本しか持たず、この特徴は速く走るための進化の結果と考えられている。サバンナに生息し、地域によっては草食獣と同様に雨季と乾季で大移動を行う。


ニュージーランド固有のキーウィ目は、走鳥類の中で最も軽いグループで、5種から構成されます。DNA分析により、500kgもの巨大な絶滅鳥エビオルニスと近縁であることが明らかになりました。キーウィが産む卵は体重の20〜25%にも及ぶ大きさで、これは祖先の名残りとされています。翼は著しく退化し、鼻孔が嘴の先端にある唯一の鳥でもあります。この嘴を地面に刺し、嗅覚を使ってミミズなどの土壌動物を探し出して食べます。飛翔力はなく、夜行性であり、視覚よりも嗅覚に頼る生活は哺乳類的な特徴を持っています。



古口蓋類は
古口蓋類は、現生鳥類の中では少数派ですが、その進化の過程で多様な形態と生態を獲得してきました。飛翔能力を失った走鳥類だけでなく、飛翔能力を持つシギダチョウ類も存在することは、古口蓋類の進化の複雑さを物語っていた。
カモ・キジ類は、新口蓋類として最初に分岐したグループで、恐竜が絶滅した白亜紀末の大絶滅を生き延びました。狩猟鳥(Game Birds)とも呼ばれ、人間の食料として重要な役割を果たしてきました。このグループには多くの家禽が含まれ、比較的大型の種が多く、美味しい肉を持っています。さらに、孵化直後に歩ける「ヒヨコ」と一般に呼ばれるような早成性のヒナを持つため、家禽として適しています。












09 アブラヨタカ目
南米の洞窟に生きる果実食の夜行性鳥類
アブラヨタカ(Steatornithiformes)は、南アメリカ北部の山岳地帯に生息する鳥で、この目には1種のみが属する。かつて先住民たちは、この鳥の脂肪分の多いヒナから油を採取し、ランプの燃料や調理に利用していたことから「油夜鷹」と名付けられた。
ヒナの体重は親鳥の約1.5倍に達し、最大で600gにもなる。この鳥は洞窟内で巣を作り、日中はそこで過ごす。夜になると森へ飛び立ち、主にヤシの実などの果実を食べる。夜行性の鳥類の中で、果実を主食とするのはこの種だけです。
さらに、アブラヨタカは可聴域のクリック音を発し、反響定位(エコーロケーション)を行うことで周囲の環境を把握する。この能力は主にコウモリに見られるが、鳥類では珍しい特徴だ。また、アマツバメ類と同じく、4本の趾(あしゆび)がすべて前を向く「皆前趾足(かいぜんしそく)」という構造を持ち、これを使って洞窟の壁にぶら下がることができます。


13 アマツバメ目
空を極めたスピードスターと蜜の求道者
アマツバメ目(Apodiformes)は、スズメ目を除けば最も多様性に富む鳥のグループで、世界の熱帯から温帯域に広がるアマツバメ科(19属113種)、東南アジアを中心とするカンムリアマツバメ科(1属4種)、そして南アメリカを中心に進化した**ハチドリ科(112属366種)**の計3科、132属483種が属する。
このグループは、夜行性のズクヨタカの祖先から進化し、昼行性に適応した後、飛翔能力を極限まで発達させる2つの道をたどった。
- アマツバメ科は、鎌形の翼を持ち、鳥類最速の飛翔能力を獲得し、世界中に分布を広げた。
- ハチドリ科は、南アメリカで小型化し、翼を短くしてホバリング(停空飛翔)を可能にし、花の蜜を効率よく吸うように進化。現在、鳥類で最も多くの種を擁するグループです。
このように、アマツバメ目は空中生活に特化した驚異的な適応を遂げた鳥たちの集まりでです。

14 エボシドリ目:緑の輝きを持つアフリカの跳躍者
エボシドリ目(Musophagiformes)は、カッコウ目やノガン目に近縁で、**エボシドリ科(6属23種)**のみで構成されるグループである。サハラ以南のアフリカ(エチオピア区)の森林やサバンナに生息し、果実を主食とする。
しっかりとした足と丸い翼、長い尾を活かし、木々の間を跳ね回るように移動する。全ての種が特徴的な烏帽子状の冠羽を持ち、その美しい羽色が魅力的である。特に、多くの種(ハイイロエボシドリ属5種とミドリエボシドリを除く)はトゥラコベルディンという独自の緑色素を持つ。
このトゥラコベルディンは鳥類で唯一の青系色素であり、他の鳥が構造色によって青を作り出しているのとは異なる。このため、エボシドリの緑の羽色は独特で、鮮やかな輝きを放つ。



16 カッコウ目:多様な戦略を持つ托卵の名手
カッコウ目(Cuculiformes)は、**カッコウ科(33属147種)からなり、鳥類の中でも特に多様な生態を持つグループである。共通の特徴として対趾足(2本の趾が前向き、2本が後向き)**を持ち、樹上や地上での生活に適応している。
繁殖戦略も多様で、托卵(他の鳥の巣に卵を産み、育てさせる)を行う種が多いが、一夫一妻制、一夫多妻制、ヘルパー(他個体が子育てを助ける)を伴う協同繁殖など、さまざまな繁殖形態が見られる。最近の分子系統研究により、この科の中で少なくとも3回は独立に托卵行動が進化したことが明らかになった。
食性も多様で、小型の種は主に毛虫や芋虫を好み、大型の種はトカゲやカエルを捕食する。また、果実を主食とする種も存在する。多くは森林に生息するが、一部の種は草原にも適応しています。

17 クイナモドキ目:マダガスカルの地上を駆ける隠れた生き物
クイナモドキ目(Mesitornithiformes)は、マダガスカル島固有の鳥類で、1科2属3種のみが属する小さなグループ。クイナのように地上を歩き回り、昆虫や種子、小さな漿果(しょうか:果肉の柔らかい果実)を食べるが、水辺にはこだわらず、乾燥した森林地帯にも生息している。
飛ぶことはほとんどなく、危険が迫ると走って逃げるのが特徴。通常はペアや小規模な群れで行動する。また、クイナモドキはサギ類に見られる「粉綿羽区(ふんめんうく)」が5対10所もあるという独特の特徴を持つ。
粉綿羽は、羽毛が汚れたり濡れたりするのを防ぐ特殊な羽で、クイナモドキはこの機能を多くの部位に持っている鳥である。


19 ハト目の特徴と生態:力強い飛翔と独自の子育て
ハト目(Columbiformes)は、ハト科に属する51属353種からなる鳥類のグループであり、南極を除く世界中に広く分布しています。発達した胸筋により力強い飛翔が可能で、「鳩胸」という表現が使われることもあります。
上嘴の付け根には「鼻瘤(びりゅう)」と呼ばれる肉質のこぶ状の部分があり、これはインコや猛禽類の蝋膜とは異なる特徴です。また、消化器官には強力な砂嚢があり、硬い種子をすり潰して消化する能力を持っています。
ハトの子育てにおいて特筆すべき点は、「ピジョンミルク」と呼ばれるミルク状の液体を親鳥が喉から分泌し、ヒナに与えることです。このユニークな方法により、ヒナは成長に必要な栄養を得ることができます。

20 ツル目の多様性:古代から続く進化の系譜
ツル目(Gruiformes)は、鳥類の中でも最も古くに形成されたグループの一つであり、その起源は恐竜が絶滅した直後までさかのぼるとされています。
そのため、非常に多様性に富んでおり、ツル科、クイナ科、ラッパチョウ科、ヒレアシ科など6科55属189種が含まれ、世界中に広く分布しています。
名前に「ツル」がつくものの、実際にはクイナ科が152種と圧倒的に多く、ツル科はわずか15種にとどまります。クイナ科の鳥は、体が左右に平たく側扁しており、長い脚を持つ中型の湿地性の鳥が多いのが特徴です。特に島に生息する種は飛翔能力を失ったものが多く、その結果、絶滅種が最も多く含まれるグループとなっています。




21 カイツブリ目の特徴:水中生活に適応した潜水名人
カイツブリ目(Podicipediformes)は、1科6属23種からなる鳥類のグループで、世界中に広く分布しています。日本では5種が記録されています。これらの鳥は、水中に潜って魚や水生昆虫、甲殻類などを捕食するのが特徴です。
カモ類とは異なり、足の指は「弁足」と呼ばれる葉状の形をしており、爪まで平らになっています。学名のPodicepsは「尻足」を意味し、その名の通り、足が体の後方(尻の近く)についているため、泳ぎや潜水には適しているものの、歩くのは苦手です。また、尾は短く、ほとんど目立ちません。
ヒナは白と黒の縞模様を持ち、小さいうちは親鳥の背中に乗って移動する姿がよく見られます。この行動は、捕食者から身を守るためとも考えられています。

22 フラミンゴの特徴:独特な嘴と鮮やかなピンクの秘密
フラミンゴ目(Phoenicopteriformes)は、フラミンゴ科1科のみからなり、3属6種が世界の温暖な地域(オーストラリアを除く)に分布しています。長い脚と首、鮮やかなピンクの羽色が特徴的な大型の水鳥です。
フラミンゴの嘴は特異な形をしており、「へ」の字に曲がった上嘴の縁にはラメラ状と呼ばれるヒゲのような組織があります。これを使い、水中の藍藻や小さな甲殻類などを濾し取って食べます。羽のピンク色は、餌となる甲殻類に含まれるカロテノイド色素によるもので、食事に色素が不足すると羽色が白っぽくなってしまいます。
近年のゲノム解析により、フラミンゴはカイツブリ類と非常に近縁であることが判明しました。本来なら同じグループに分類できるほどですが、形態の違いが大きいため、独立したフラミンゴ目として扱われています。

23 チドリ目の多様性:進化と分類の変遷
チドリ目(Charadriiformes)は、スズメ目に次いで科の数が多いグループで、19科90属391種からなります。その多様性は非常に高く、世界中の様々な環境に適応しています。
以前は、チドリ亜目(シギを含む)、カモメ亜目、ウミスズメ亜目の3つに分類されていましたが、近年のゲノム解析により、チドリ亜目、シギ亜目、ウミスズメを含むカモメ亜目、そしてミフウズラ亜目の4亜目に再編されました。
特に注目すべきはミフウズラ科で、これは旧世界とオーストラリアの熱帯地域に分布する陸鳥のグループです。かつてはツル目に分類されていましたが、分子系統学的研究の結果、実はカモメ亜目と最も近縁であることが判明しました。この発見により、分類体系が大きく見直されることとなりました。




24 ジャノメドリ目:進化が生んだ意外な近縁関係
ジャノメドリ目(Eurypygiformes)は、ジャノメドリ科とカグー科の2科2属2種のみからなる、非常に珍しい鳥類のグループです。ジャノメドリは中南米の水辺に生息し、カグーはニューカレドニア島(オーストラリア北東)に生息する飛べない鳥です。
これらの鳥は生息環境も特徴も異なり、長らく類縁関係が考えられていませんでした。しかし、近年のゲノム解析によって、両者が同じ目に属することが判明しました。
ジャノメドリは驚くと、翼を素早く広げて**「蛇の目(ジャノメ)」模様を見せる行動をとります。この模様は金・赤・黒・銀の印象的な配色で、敵を威嚇する効果があると考えられています。カグーにも控えめながら似た模様と行動**が見られることから、両者の進化的なつながりが示唆されています。


ペンギン大集合:進化が生んだ海の名ダイバー
ペンギンは、直立した姿勢とヨチヨチ歩く短い脚が愛らしい鳥です。こんなユニークな生き物が進化できたのは、陸に肉食獣がいない南極やニュージーランドという特殊な環境があったからこそです。
ペンギンにとって、海中はまさに**「水を得た魚」**のような場所ですが、鳥である以上、繁殖期には陸に上がらなければなりません。陸上で卵を温め、ヒナを育てる必要があるのです。現在知られているペンギンの現生種は18種で、多くの化石種も発見されています。ゲノム解析の結果、ペンギンの起源は**約6000万年前(暁新世中期)**にさかのぼり、ミズナギドリ目から分岐したと推定されている。

27 ペンギン目:海に適応した飛べない鳥
ペンギン目(Sphenisciformes)は、かつてミズナギドリ目との類縁関係が推定されていました。その根拠の一つが、コガタペンギンの鼻孔が「鼻管」と呼ばれる管状鼻孔を持つことでした。近年のゲノム解析によって、この推定が裏付けられましたが、分岐は非常に古く、約6100万年前にさかのぼることが分かっています。ペンギンは、南極海のオキアミを中心とした豊富な海洋資源を活用しながら進化してきた海鳥です。陸生の捕食者がいない孤島や南極で繁殖し、近海で餌を獲るため、飛ぶ必要がなくなり飛翔能力を失いました。
ペンギンの分布は南半球に限定され、北極には生息しません。しかし、北極にはチドリ目ウミスズメ科のオオウミガラスがペンギンに似た姿に収斂進化しており、環境に適応した類似の進化が見られるのも興味深い点。

28 ミズナギドリ目:海を渡る翼と管状鼻孔の海鳥たち
ミズナギドリ目(Procellariiformes)は、管状の鼻孔と長い翼を持つ外洋性の海鳥で、世界中の海に広く分布しています。このグループには、アシナガウミツバメ科、アホウドリ科、ウミツバメ科、ミズナギドリ科の4科26属149種が含まれます。
特に**南極やその周辺の島で繁殖するアシナガウミツバメ類(5属10種)は、海上をツバメのように滑空する姿が特徴的です。その姿が、北半球に生息するウミツバメ類(1属18種)**によく似ていたため、かつては同じウミツバメ科の亜科とされていました。しかし、近年の研究により、アシナガウミツバメ類はミズナギドリ目の他の3科と姉妹群の関係にあることが判明し、独立した科として分類されるようになった。




29 コウノトリ目:独自の進化を遂げた大型の水鳥
コウノトリ目(Ciconiiformes)は、1科6属20種からなる大型の水鳥のグループです。特徴として、長く太い嘴としっかりとした長い脚を持ち、主に魚、カエル、貝類などを捕食します。分布の中心は旧世界(アフリカ、ヨーロッパ、アジア)ですが、一部の種は他の地域にも生息しています。
中でもハゲコウ類は特異な存在で、水辺だけでなくサバナや乾燥した草原にも適応し、腐肉や爬虫類、昆虫なども食べる雑食性を持っています。
コウノトリ科は進化の上で特異なグループで、他の鳥類の科と一緒に分類されたことがほとんどありません。ゲノム解析の結果、約6000万年前にカツオドリ目とペリカン目の共通祖先から分岐して以来、科の内部で新たな分岐がなかったことが明らかになりました。これは、コウノトリが長い進化の歴史の中で、比較的安定した形態や生態を保ち続けてきたことを示しています。


30 カツオドリ目:多様な全蹼足の海鳥たち
カツオドリ目(Suliformes)は、グンカンドリ科、カツオドリ科、ウ科、ヘビウ科の4科12属61種からなる海鳥のグループです。かつては、全蹼足(ぜんぼくそく)と呼ばれる4本の趾(あしゆび)すべてに水かきがある鳥はペリカン目に分類されていました。しかし、近年の研究により、ペリカン科とネッタイチョウ科をペリカン目に残し、それ以外の4科をカツオドリ目として独立させました。
カツオドリ目に属する鳥たちは皆全蹼足を持っていますが、グンカンドリ科だけは例外的に、趾の間に切れ込みがあり、第4趾が前後に可動する構造を持ちます。このため、グンカンドリの足は**「欠全蹼足(けつぜんぼくそく)」**とも呼ばれています。




新鳥類 ゲノム解析が明らかにしたこと
近年のゲノム解析は、鳥類の系統関係について多くの新たな知見をもたらした。
- 新鳥類の系統: 猛禽類が出現する前の新鳥類は、ヨタカ系統、ハト系統、ツル系統、その他水鳥の系統に分けられることが示された。
- 目の再編: 従来の形態に基づく分類が見直され、ゲノム解析の結果に基づいて、目の再編が行われました。例えば、ジャノメドリ目、ネッタイチョウ目、フラミンゴ目などが新たに提唱。
- 近縁関係の解明: 形態からは想像もできなかった鳥類間の近縁関係が明らかになりました。例えば、ズクヨタカ目とアマツバメ目、サケイ目とクイナモドキ目、フラミンゴ目とカイツブリ目などが近縁であることが示されました。
猛禽大集合:空の捕食者たちの進化の謎
猛禽類とは、哺乳類や鳥類を主に捕食する鳥のグループを指します。これまで、猛禽類は大きく昼行性のタカ・ハヤブサ類と夜行性のフクロウ類に分けられ、それぞれ異なる起源を持つと考えられていた。
しかし、最新のゲノム解析によって、これらの猛禽類は共通の祖先から進化したことが明らかになりました。この共通祖先は、**恐竜が絶滅した直後(約6600万年前)**に出現し、食肉目哺乳類と並ぶ最初の捕食者だったと考えられています。
猛禽類の進化の流れ
- 約6300万年前:タカ類が最初に分岐
- その直後:フクロウ類とブッポウソウ上目(キツツキ類など)を含むグループと、ハヤブサ類を含む南鳥類(ナンチョウルイ)という系統に分かれた
この発見により、タカ・ハヤブサ類とフクロウ類が、実は遠くない進化的なつながりを持っていたことが示され、空の頂点捕食者たちの進化の歴史が大きく書き換えられました。

32 ツメバケイ目:特殊な進化を遂げた葉食性の鳥
ツメバケイ目(Opisthocomiformes)は、鳥類の中でも極めて特殊な進化を遂げたグループであり、唯一、木の葉を主食とする鳥として知られています。
近年のゲノム解析による新たな系統樹では、ツメバケイ目は猛禽類(タカ目やフクロウ目など)の系統群全体と姉妹群の関係にあることが示唆されています。これは、鳥類の進化の過程で猛禽類がどのように登場したのかを解明する重要な手がかりとなる可能性があります。
ただし、この系統関係はまだ完全には確定しておらず、逆に猛禽類を経てツメバケイが進化した可能性も考えられています。ツメバケイはその独特な食性と生態から、鳥類の進化の謎を解く重要な鍵となる存在です。

33 タカ目:進化と繁栄を遂げた猛禽類
タカ目(Accipitriformes)は、コンドル科、ヘビクイワシ科、ミサゴ科、タカ科の4科78属265種からなる猛禽類のグループです。特にタカ科はこの目の中で最も繁栄しており、属の91%、種の97%を占めるほど成功したグループとなっています。
ゲノム解析による系統樹では、進化の流れが以下のように示されています:
- 約5700万年前(暁新世後期):最初にコンドル科が分岐
- 約4000万年前(始新世後期):次にヘビクイワシ科が分岐
- 約2700万年前(漸新世中期):最後にミサゴ科とタカ科が分岐
コンドル科やヘビクイワシ科は、ミサゴ科やタカ科のような強力な爪や趾を持たないのが特徴です。特にタカ科は、強力な爪の発達が捕食能力を向上させ、これが繁栄の大きな要因となったと考えられている。






34 フクロウ目:夜のハンターへの進化
フクロウ目(Strigiformes)は、タカ目の祖先から分かれた猛禽類で、暁新世中頃(約6100万年前)にノガンモドキ目やハヤブサ目の共通祖先と袂を分かち、夜行性へと進化。
この目の最初の大きな分岐は、**始新世中頃(約4500万年前)**に起こり、メンフクロウ科とフクロウ科の2つに分かれました。フクロウは、この時代にはすでに以下のような夜のハンターとしての特徴を備えていたと考えられています:
- 大きな目が正面を向き、優れた夜目を持つ
- 顔盤(かおばん)が集音器の役割を果たし、音で獲物を探して正確に位置を特定する
- 翼の羽が「ベルベット状」になり、羽音を消す
- 風切羽の前縁が「鋸歯構造(ギザギザ)」になり、風を切る音を消す
このような進化により、フクロウは夜の世界に適応し、今日まで続く優れた夜行性の猛禽類となりました。





35 ネズミドリ目:猛禽類から最初に分かれた小さな樹上鳥
ネズミドリ目(Coliiformes)は、猛禽類から最初に分化した非猛禽類のグループであり、その祖先はブッポウソウ上目(ネズミドリ目からキツツキ目までの6目を含む)の起源となりました。この目の分岐は非常に古く、暁新世中頃(約6000万年前)にさかのぼります。現在、1科2属6種のみが現存し、その分布はサハラ以南のアフリカに限られている。
ネズミドリの特徴
○名前の由来:ネズミ色や茶色の地味な羽をもち、ぼさぼさした見た目
○外見:冠羽を持ち、尾が長い
○生態:10~30羽ほどの群れで樹上生活をする
○足の構造:**「皆前趾足(ぜんぜんしそく)」**と呼ばれ、すべての趾(足指)が前を向く特殊な形をしている
「枝の上を歩くことができる」「枝にぶら下がることも可能」この特殊な足の構造と群れでの生活が、ネズミドリの生存戦略として進化したと考えられています。

36 オオブッポウソウ目:マダガスカルの孤高の捕食者
オオブッポウソウ目(Leptosomiformes)は、マダガスカル固有の鳥類で、1科1属1種のみの非常に特異なグループ。
かつてはブッポウソウ目の一科とされていましたが、遺伝的にブッポウソウと単系統の関係にはないことが判明し、独立した目として分類されるようになりました。
特徴
- 英名:「Cuckoo-roller(カッコウ-ブッポウソウ)」
- カッコウのように長い尾羽
- ブッポウソウのように大きな頭と鉤状の嘴
- サイズ:全長50cmにもなる大型の鳥
- 食性:
- 大型昆虫
- 爬虫類
- 小型哺乳類
マダガスカル島という隔絶された環境の中で独自の進化を遂げたこの鳥は、生態学的にも分類学的にも非常に興味深い存在です。
37 キヌバネドリ目:熱帯の森に映えるカラフルな鳥
キヌバネドリ目(Trogoniformes)は、1科7属46種で構成され、世界の熱帯地域に分布する鳥類のグループです。特に中南米に多くの種が生息し、アフリカには3種、南~東南アジアには12種が確認されている。
キヌバネドリの特徴
- 変対趾足(へんたいしそく)
- 第3趾と第4趾が前向き、残りの趾が後ろ向きという珍しい構造
- 樹上生活に適応し、枝にしっかりとつかまることができる
- 進化の背景
- ブッポウソウ上目の中で3番目に分岐
- 最初に分岐したネズミドリ目が地味な羽色なのに対し、キヌバネドリ目は非常に派手な羽色を持つ
- 鮮やかな外見
- 緑、赤、青などの美しい羽色が特徴
ヌバネドリ目は、その華やかな羽色と独特な足の構造によって、熱帯の森の中でひときわ目を引く存在となっている。
- 緑、赤、青などの美しい羽色が特徴

38 サイチョウ目:特徴的な嘴を持つ熱帯の鳥
サイチョウ目(Bucerotiformes)は、かつてブッポウソウ目に分類されていました。しかし、近年のゲノム解析により、現ブッポウソウ目がキツツキ目と近縁であることが判明し、サイチョウ目として独立。
この目には、以下の4科19属77種が含まれます:
- サイチョウ科(大型で目立つ嘴を持つ)
- ジサイチョウ科(小型のサイチョウ類)
- ヤツガシラ科(冠羽を持つ独特な姿)
- カマハシ科(湾曲した嘴が特徴)
特徴と分布
- 熱帯性の鳥で、旧大陸(アフリカ、アジア)やメラネシアに生息
- アフリカ起源と推定されている
- サイチョウの特徴的な嘴
- 嘴の上に「犀角(カスク)」と呼ばれる突起を持つ
- この突起がサイの角を思わせることが、和名「サイチョウ(犀鳥)」の由来
サイチョウ目の鳥たちは、その独特な嘴と熱帯に適応した生態で知られ、熱帯の森林やサバンナで重要な役割を担っています。

39 ブッポウソウ目:分類が再編されたカラフルな鳥たち
かつてブッポウソウ目(Coraciiformes)は非常に多様な鳥を含む大きな分類群でした。しかし、ゲノム解析の結果、その中の一部がキツツキ目とより近縁であることが判明し、分類が見直されました。これにより、サイチョウ類やキヌバネドリ類が別の目として独立し、ブッポウソウ目は単系統になるように細分化された。
現在のブッポウソウ目の構成
6科32属186種が含まれます:
- ブッポウソウ科(カラフルでダイナミックな飛翔)
- ジブッポウソウ科(小型のブッポウソウ類)
- コビトドリ科(森林に生息する小型種)
- カワセミ科(魚を捕る鋭い嘴を持つ)
- ハチクイモドキ科(ハチクイに似るが異なるグループ)
- ハチクイ科(鮮やかな羽色で知られる)
ブッポウソウ目の特徴
- 鮮やかな羽色を持つ種が多い
- 森林や水辺に生息し、空中での捕食が得意なものも多い
- キツツキ目と近縁であり、一部の行動や生態に共通点がある
分類の再編によって、ブッポウソウ目に残った鳥たちはより明確な共通の特徴を持つグループとなり、その進化の過程がよりはっきりと理解できるようになりました。




40 キツツキ目:多様な進化を遂げた森の鳥たち
キツツキ目(Piciformes)は、9科74属449種からなる多様な鳥類のグループです。種数ではスズメ目、アマツバメ目に次いで3番目に多く、科の数でもスズメ目、チドリ目に次いで3番目の規模を誇ります。
キツツキ目の分類と進化
- 9つの科の中で、キツツキ科とミツオシエ科は特に近縁で姉妹群を形成
- ゴシキドリ科の再編
- かつて大きなグループだったゴシキドリ科が4つの科に分けられた
- その結果、新たに**「ゴシキドリ」の名を持つ3つの科**が誕生
- この分類変更の理由は、中南米のオオハシ科が旧大陸のゴシキドリ科よりもアメリカゴシキドリ科に近縁であることが判明したため
キツツキ目の特徴
- 木をつつく行動で知られるキツツキ類
- 果実食の種類も多く、ゴシキドリ類やオオハシ類は果実を主に食べる
- ミツオシエ類は社会性を持ち、他の鳥の巣に卵を産む托卵行動をとる
キツツキ目は、森の中で木を叩く音やカラフルな姿で知られる多様な鳥たちのグループであり、世界中の森林で重要な役割を果たしている。



41 ノガンモドキ目:南米に生きる古代猛禽の名残
ノガンモドキ目(Cariamiformes)は、現生では南アメリカに生息する1科2属2種のみの小さなグループで、アカノガンモドキとハイイロノガンモドキが含まれます。かつてはツル目の一部(ノガンモドキ科)とされていましたが、ゲノム解析の結果、ハヤブサ目・インコ目・スズメ目の姉妹群であることが明らかになりました。この発見により、ノガンモドキ目が猛禽類の系統に近いことが判明しました。
ノガンモドキ目の特徴
- 主に嘴を使って狩りをする(タカ類のような強力な足ではなく、嘴で獲物を捕らえる)
- 食性は多様で、大型昆虫、小型哺乳類、爬虫類、鳥類を捕食するほか、果実や種子も食べる
絶滅種:南米の「恐鳥類」
この目には、かつて「恐鳥類」として知られるフォルスラコス科が含まれていました。彼らは漸新世から鮮新世にかけて南アメリカに生息していた飛べない巨大な肉食鳥で、強力な嘴を武器に頂点捕食者として君臨していました。
現生のノガンモドキは比較的小型ですが、その進化の歴史をさかのぼると、かつては恐竜絶滅後の南米で恐れられたハンターの子孫であることが分かります。

42ハヤブサ目:急降下のハンターと多様な進化
ハヤブサ目(Falconiformes)は、ハヤブサ科のみで構成される鳥類のグループで、12属65種が含まれます。
ハヤブサ目の分類
- ワライハヤブサ亜科(2属8種)
- ハヤブサ亜科(10属57種)
- カラカラ族(6属11種 / 主に中南米に分布)
- ハヤブサ族(4属46種 / 旧世界に分布)
ハヤブサ目の特徴と進化
- ワライハヤブサ類やカラカラ類は、丸みを帯びた翼を持ち、比較的ゆっくりと飛ぶ。猛禽類としては動きが緩慢な種類も多い
- ハヤブサ族のうち3属は小型で、主に飛翔性昆虫を捕食
- **ハヤブサ属(39種)**は、尖った翼を持ち、高速で急降下して獲物を襲う狩猟スタイルが特徴
- この狩りのスタイルが猛禽類としての優位性を示している
- しかし、彼らの進化は意外にも比較的新しく、約3000~2000万年前以降に登場した
ハヤブサ目は、単なる猛禽類ではなく、環境に応じた多様な進化を遂げたグループであり、特に**ハヤブサ属の「急降下狩猟」**は、空の捕食者としての究極の進化形といえるでしょう。



43インコ目:賢く個性的な熱帯の鳥たち
インコ目(Psittaciformes)は、その**太く湾曲した嘴、直立した姿勢、太く短い脚、そして鉤爪を持つ対趾足(ぜんご2本ずつの趾)**といった特徴により、他の鳥類とはっきりと区別されます。
インコ目の分類
インコ目は4科100属408種からなり、世界の熱帯地域に広く分布。
- フクロウオウム科(最も原始的なグループ)
- オウム科
- ヨウム科(インコ科と姉妹群)
- インコ科(ヨウム科と姉妹群)
進化的には、ヨウム科とインコ科が姉妹群を形成し、その次にオウム科が分かれ、最後にこれら3科とフクロウオウム科が姉妹群となります。
その他の分類変更
- かつて独立したヒインコ科(赤い羽色が特徴でオーストラリアを中心に分布)は、現在ではインコ科の亜科とされている。
インコの特徴と生態
- 非常に高い知能を持ち、言葉を覚える能力がある種もいる
- 強靭な嘴で種子や果実を割るのに適応
- 対趾足により、木の枝をしっかりつかむことができる
- 派手な羽色を持つ種が多く、特にヒインコ類は鮮やかな赤色が特徴的
インコ目は、そのユニークな形態と驚くべき知能で知られ、世界中の熱帯地域で進化を遂げた多様な鳥たちです。



第7章 小鳥のなかま:世界に広がったスズメ目の進化
スズメ目(Passeriformes)は、「小鳥類」とも呼ばれ、猛禽類の系統から進化した鳥類のグループです。現在、現生鳥類の約3分の2弱を占めるほど多様化しており、鳥類の中で最も種数の多い目となっている。
スズメ目の進化の流れ
- 約5000万年前にニュージーランド周辺でイワサザイ類から分岐
- 亜鳴禽類(あめいきんるい)がニューギニア周辺や南米の熱帯地域で多様化
- 鳴禽類(めいきんるい)は全世界に分散しながら小型化し、陸鳥として多様な環境(ニッチ)に適応
スズメ目の特徴と成功の理由
- 高度な発声能力を持ち、さえずり(鳴禽類)はコミュニケーションや求愛に重要
- 小型で軽量な体は、さまざまな環境に適応するのに有利
- 多様な食性(昆虫食、種子食、果実食など)を持ち、生態系のあらゆるニッチを占める
スズメ目は、進化の過程で驚異的な適応能力を発揮し、世界中の森林・草原・都市など、あらゆる環境で成功を収めた鳥類のグループです。

44 スズメ目:鳥類で最も成功したグループの進化
スズメ目(Passeriformes)は、145科1,363属6,719種を擁し、全鳥類約11,314種のうち3分の2近くを占める、最も多様で成功した鳥類のグループ。
スズメ目の進化の軌跡
- 約5,500万年前(始新世初期)
- インコ目の祖先と分岐し、オーストララシアで誕生
- 亜鳴禽類(タイランチョウ亜目)と鳴禽類(スズメ亜目)に分岐
- イワサザイ類(ニュージーランドの原始的なスズメ目)から分化
- 約3,000万年前(漸新世寒冷期)にスンダランドを通って世界に拡散
- 亜鳴禽類は南アメリカで適応放散
- 鳴禽類は全世界に広がり、多様な環境に適応
スンダランドとは?
- 東南アジアの島々とマレー半島を含む大陸棚地域
- 漸新世寒冷期以降に陸地として現れ、オーストララシアの鳥類がアジアへ進出する通り道となったと考えられる
スズメ目の成功の理由
- 発達した鳴管による高度な発声能力(特に鳴禽類)
- 多様な食性(昆虫食、種子食、果実食など)により幅広い生態に適応
- 小型で適応能力が高く、さまざまな環境に分布
スズメ目は、長い進化の過程で世界中に広がり、最も成功した鳥類として驚異的な多様性を獲得した。






適応放散:ガラパゴス諸島のフィンチが示す進化の証
南アメリカ大陸から約1,000km離れたガラパゴス諸島に生息するダーウィンフィンチは、環境に応じて種ごとに異なる嘴の形や体の大きさを持っている。
近年のDNA解析により、彼らは南アメリカ北西部に生息するマメワリの仲間と近縁であることが判明した。約100万年以上前にガラパゴス諸島に渡った祖先から、現在の15種へと分化したと考えられている。
適応放散の好例
このような進化の過程は、生物が**新しい環境に適応する中で、多様な形態や行動様式を持つ複数の種へと分化する「適応放散」**の典型的な例とされています。同様の現象は、ハワイやマダガスカルの島々でも確認されている。
進化の遺伝的メカニズム
最近の研究では、嘴の形態を決定する特定の遺伝子が特定され、ダーウィンフィンチの進化のメカニズムを理解する重要な手がかりとなっています。これは、進化がどのように遺伝レベルで起こるのかを解明するうえで、貴重な研究材料だ。

最後に
本展示では、鳥類の進化と多様性について、ゲノム解析を通じた新たな知見が紹介されていた。特に、DNA解析によって鳥類の系統関係が明らかになり、かつての分類が大きく見直されていることが興味深かった。例えば、飛べない鳥であるダチョウやペンギンは、かつては似た特徴を持つため近縁と考えられていたが、ゲノム解析により、それぞれ異なる進化を遂げたことが判明した。このように、ゲノム解析は従来の形態学的分類では捉えきれなかった鳥類の進化の道筋を解き明かしている。
また、展示では、約2500万年前に生息していた巨大な海鳥「ペラゴルニス・サンデルシ」の復元モデルも紹介されていた。この鳥は翼を広げると7メートルにも達し、現存する鳥類の中ではアルバトロス(アホウドリ)が近い仲間だと考えられている。ゲノム解析の発展により、古代の鳥類の適応戦略や進化の過程をより詳細に探ることが可能になっている点が興味深かった。
一方で、現存する鳥類の絶滅危機についても強調されていた。近年の環境破壊や気候変動によって、多くの鳥類が危機に瀕している。例えば、飛べない鳥の一種であるキーウィといったニュージーランド固有の鳥類や国内ではライチョウなど人間の活動による生息地の破壊や外来種の影響で個体数が激減している。その一方でトキや、コウノトリなどは保護活動を行い個体数が増えてきている。ゲノム解析を活用することで、遺伝的多様性の保全や、絶滅危惧種の繁殖計画に役立てることが期待される。
この展示を通じて、鳥類の進化をゲノムの視点から理解することができただけでなく、絶滅の危機に瀕する鳥類を守るための科学の役割についても深く考えさせられた。ゲノム解析の技術が進化し続けることで、未来の鳥類保全にも大きく貢献することを願う。
名古屋市科学館
特別展「鳥~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」
今回の鳥展は、場所を移し開催。
そちらでも多くの来館者を魅了するはず。
名古屋市科学館 理工館地下2階 イベントホール
令和7年3月15日(土曜日)から令和7年6月15日(日曜日)

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