トミヨ属のなかで、もっとも南に分布する種で、かつては京都府と兵庫県の湧水域に生息していたが、現在ではともに絶滅している。湧水の枯渇、過度の農薬散布、圃場整備・都市化にともなう生息場所の消失が絶滅の原因と考えられる。
本種が絶滅したのは兵庫県では1930年代、京都府では1960年代と言われている。京都府個体群が絶滅した時期は、毒性の強い有機リン系の農薬使用量がピークに達した時期に一致する。
体はやや側扁した紡錐形で、尾柄は著しく低く、体高は大きく(体長の20〜25%)、イバラトミヨ雄物型(Pungitius sp.)やムサシトミヨ(Pungitius sp.)に似る。最大全長はオスで約70mm、メスで約60mm、残存する標本は30〜40mmのものが多い。背鰭棘はVIII〜IXで、鰭棘は短く鰭膜は黒い。体側の鱗板は完全で、不完全のイバラトミヨ雄物型とムサシトミヨから区別される。体は灰緑色で、暗緑色の不規則な縦条や横斑のあるものもある。ホルマリン固定の標本には婚姻色と思われる紫黒色のオス個体も残存する。