ウツセミカジカは、Jordan, Tanaka &
Snyder(1913)により北海道と南日本に分布するとされたが、その後、中村(1963)は琵琶湖と琵琶湖に注ぐ河川から得られた標本をCottus
reiniiと同定した。後藤(1989)は、琵琶湖にのみ分布しているとしている。しかし、最近の集団遺伝学的研究によって、ウツセミカジカとカジカ小卵型(両側回遊性)はきわめて近縁で個体群レベルの遺伝的関係にあることが示され、従来の形態形質に基づいた両者を別種とする根拠は消失した。したがって、今回のレッドデータブックでは従来のウツセミカジカとカジカ小卵型を一括して評価した。但し、以下の項目については、相対的により危機的状況にあるウツセミカジカについて詳細を記述する。
ウツセミカジカは琵琶湖水系にのみ孤立して分布し、また近年における湖の富栄養化およびブラックバスなどの外来性捕食魚の個体数増加などにより、その生息環境の悪化が進行している。一方、カジカ小卵型は、青森県から和歌山県までの本州太平洋側と四国に分布する。