魚類
陸産貝類
昆虫類
多様性生物希少標本ネットワーク
コウチュウ目 クワガタムシ科
ヤエヤママルバネクワガタ 学名 Neolucanus insulicola insulicola
採取地 鹿児島県 奄美大島
採取年月日 1997年6月 サイズ 43mm ♂
(独立行政法人) 森林総合研究所 収蔵
スズキ目 ハゼ科 ムツゴロウ 学名 Boleophthalmus pectinirostris (Linnaeus, 1758)
採取年月日 2000年8月 サイズ 全長 125mm
国立科学博物館動物研究部
脊椎動物研究グループ(魚類) 収蔵
フクロウ目 フクロウ科 ワシミミズク 学名 Bubo bubo (Linnaeus, 1758)
採取年月日 2000年1月13日 サイズ 全長1200mm (参考) 採取地 茨城県 ♀
ミュージアムパーク 茨城県自然博物館 収蔵標本
中腹足目(ニナ目) タニシ科 マルタニシ 学名 Cipangopaludina chinensis laeta
採取地 群馬県 採取年月日 1996年6月9日 サイズ 全長 45mm
群馬県立自然史博物館 収蔵標本
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Exhibition レポート
企画展 レポート
生き物に学び、くらしに活かす ―博物館とバイオミメティクス
2016年4月19日(火)~6月12日(日)
国立科学博物館(東京・上野) 日本館1階 企画展示室・中央ホール
5 異分野の学術交流を支える技術
第5章では、異分野での学術交流についての話だ。今回の企画展示では、北海道大学大学院情報科学研究科 メディアダイナミクス研究室 長谷山 美紀教授が担当されていた。メディアダイナミクス研究所では、生物の微細構造から新機能の発見を支援する「バイオミメティクス・データベース」の研究に取り組み、そのデータベースでは、現在国立科学博物館や北大総合博物館から提供された多種多様の昆虫や魚、鳥などの画像が蓄積され、その数は万単位。そんな中から、今回の展示では、公開の許可を得た画像を検索エンジンに使用し紹介されている。
ここでは、異分野の学術交流の重要性や、その方法について解説されていたので紹介しておこう。
バイオミメティクスの研究開発では生物学と工学のような、異分野での意志疎通が必要である。例えば、生物学の言葉で書かれた生物学の情報を研究者が読み解いて、実際のものづくりに生かしていかなければならない。そのような異分野連携のために、情報科学のテクニックを使って、異分野の情報を橋渡しすることが重要である。
異分野の学術交流を可能にするデータベース
バイオミメティクスに有用なデータベースには、工学研究者が技術革新のヒントを得られることが求められる。したがって工学研究者が工学の言葉で利用できなくてはならない。生物学者が記述する生物学の言葉と、工学者が技術開発のために用いる工学の言葉が互いに理解可能でなければせっかくのデータの集積が無駄になってしまう。バイオミメティクス研究推進のためには、オントロジー(対象世界に存在する概念感の関係を体形的に示したもの)を実装し、異分野間の意思疎通が可能なデータベースの実現が急務であることが解説されている。
生物SEM画像のデータベース
生物の構造と機能に学ぶ観点から、生物の微細構造を記録した画像データであるSEM写真を集積したデータベースが、バイオミメティクス研究の情報基盤として非常に重要である。生物の微細構造に共通する形態や機能を、生物の生態と突き合わせることによって、工学技術に利用できる微細構造へのヒント、すなわち「気づき」が得られることが出来るということだ。
長谷山 美紀教授は今回の企画展の中で、分類学上は近縁状態ではなくてもデータベースを利用したバイオミメティクス画像検索エンジンを使い類似画像を見つけ出すことで、同じ機能があるのではなかと「気づき」、知ることができるようになる。また、生物の画像だけではなく、合成繊維の情報も入れておけば、化学的に作られたものと生物の情報とを横断した情報検索もできるのでより多くの「気づき」がえられるのでなかと話されていた。
6 博物館標本とバイオミティクス
この章では、博物館に収蔵されている標本の重要性と、生物系の研究者が生き物の機能や能力からどのようなバイオミメティクスのアイデアをもっているか知ることが出来る。
博物館はバイオミメティクスの「宝箱」
自然史系の博物館には、おびただしい数の生物標本が保存されている。生物のグループによって保存の仕方はさまざまだ。しかし、多くの場合、私たちは、バイオミメティクスに有用な情報と材料を博物館の標本から見つけ出すことができる、つまり博物館は、バイオミメティクスの「宝箱」というこだ。
甲虫の飛翔を制御する装置
甲虫は、全昆虫の40%~50%の種数を占める、きわめて大きな昆虫群、甲虫は後翅だけをはばたいて飛び、ふだんは前翅の下側に折りたたんで収納している、甲虫は空中を飛ぶために、前後の翅にさまざまは装置を備えており。飛ばないときに前翅が開かないように固定する装置、後翅の折りたたみやはばたきを補助する装置であることがカブトムシの開翅標本とSEM画像から知ることができた。
カブトムシのセレーション?
昆虫も飛翔する。フクロウの翼が静音に働くセレーションという構造があることは、鳥のコーナーで紹介されていたとうりだが、カブトムシの翅にも似たような構造がある。それらはすべての後翅の前のヘリにあり、翅の付け根に近いところには外側に向いたカギ爪上の突起が1列に並んでいる、カブトムシの後翅にはちょうど中間あたりに折れ曲がる部分があるが、その曲がり部分の内側には、蛇腹のように凸凹になった部分があり、この部分の構造は特殊でさらなる研究が必要であることが解説されている。
さらに海洋動物から学ぶ
海洋生物の将来につながるバイオミメティクスのヒントとして、ガラスを作るカイメン、サメ肌、底生魚から高性能吸盤について紹介。カイロウドウケツカイメンは深海底に生息するカイメンで、針状のガラス繊維を作る。この方法を利用すれば、高温ではなく常温でガラスを作ることができる。
サメ肌は、水中での防汚素材、ウバウオの吸盤は海藻の上などぬめりのある場所でも吸盤が滑らずに吸着力を維持することに注目。
詳しく内容を見ていこう。
体内でガラスを作る海綿動物
深海性のカイメンはガラスカイメンと呼ばれ、その骨片はガラス素材の二酸化珪素でできている。工学的にガラスを成型する場合、高炉が必要だが、カイロウドウケツカイメンはそれを深海の低温環境で行っている。そのガラス繊維は断面が層状になり、光ファイバーと同等の光伝送性能があり、工業用のものに比べ強度が増し、より柔軟であるといわれているもの。この方法を利用すれば低コストで光ファイバーが作れるだけではなく、さらに品質改良ができると注目されている。解説されているパネルの下には、光ファイバーとガラス繊維が並べて展示されていた。
底生魚から高性能吸盤のヒント
ウバウオやダンゴウウオの腹面には大きな吸盤がある。この吸盤で岩や海藻の表面に吸着し、どのような方向から来る塩の流れに対しでも流されることがない。
また吸い付く場所が多少凸凹でも、汚れていても機能する。一見すると吸着方法は人工的な吸盤と同だが、吸盤がプラスチックよりも柔らかく、超極細の毛状構造があり、吸着面でのスリップを抑えることで吸着性が増していると紹介。
ウバウオと吸盤
ウバウオの仲間は世界に160種知られ、日本には10種ほどが生息している。ほとんどが全長10cmにも達しない小型種。主に浅い海に生息していて、腹部にある吸盤の接着面側には、直径0.02ナノメートルの極細の毛が生えている。この毛のおかげで岩の表面や海藻の上などぬめりのある場所でも吸盤が滑らずに吸着力を維持する。
サメ肌への期待
サメのなかまは浮遊力にとむものからほとんど動かないものまでを含めると約400種になる。サメ肌がザラザラなのは、軟骨魚類に特有な楯鱗(じゅんりん)のおかげだ。遊泳性のサメの楯鱗には水の抵抗を少なくする能力があり、形状をまねた構造がすでに一部の競泳水着や船舶、旅客機に利用されている。一方であまり泳がないサメは楯鱗と体の表面を覆う粘液のおかげで、汚れや寄生生物がつきにくいと考えられている。サメ肌は水中での防汚素材の開発につながる素材であることを紹介していた。
底生動物を食べるネコザメ
ネコザメは浅海底生性のおとなしいサメ。体の表面は小さない十字形の鱗で覆われている。その鱗は寄生虫などをつきにくくする機能が考えられる。
岩礁域に生息するトラザメ
トラザメは浅海から深海までの岩礁域に生息する、日本では普通に見られるおとなしいサメ。その鱗は後方が尖ったしずく形です。岩礁域に生息していても傷や汚れがつきにくい仕組みが鱗にあるかもしれず防汚に有効であるかかもしれないとされていた。
各展示には標本と生態写真が展示され解説内容を合わせその特徴を知ることができた。
7 バイオミメティクスが示す未来
最後のコーナーでは、バイオミメティクスが示す未来へのビジョンがテーマ。
バイオミメティクスはモノつくりの技術を革新することだけで、それは、現代の社会問題を解決し、人間社会の新たなあり方を提案するものだ、ではバイオミメティクスの導入によって私たちはどのような未来を目指しているのだろうか。パネル解説の内容から紹介しておこう。
人間の文明と接続可能性
人類の文明は数千年の歴史を得た現在大きな危機に直面している。温室効果ガスの過剰な排出による地球規模の温暖化、生物多様性の喪失による生態系のバランスの崩壊は人類の未来を左右する深刻な問題だ、人間社会の持続可能性にバイオミメティクスはどのように関わってくるのだろうか。
環境負担の少ないシロアリの巣の空調
熱帯のアフリカの地面に高さ3m以上の巨大な巣を作るシロアリの一種のmacrotermes bellicosusは、集めた木の葉を発酵察せ、生じたキノコを収穫して食料とする習慣をもっている。その巣の内部にはトンネルが網の目のように張り巡らせており、太陽の輻射とシロアリの活動で生じた熱気を効率よくはいきできるような作りになっている、そのため地表面が非常に高温になる熱帯でも、快適に生活している。このシロアリの巣の構造を参考にして、ジンバブエの都市では空調のための電力消費を大きく抑えたショッッピングセンタービルが建設されました。
トンボの翅の風力発電
また、トンボは海を越えて長距離の渡りをする昆虫として知られている。チョウのように波に乗っているのではなく、羽を翼として機能させる滑空によって渡っているのだ、大分にある日本文理大学の小幡研究室では、トンボの凸凹した薄い翅を使って遅くてゆっくりとした流れを制御しているメカニズムを発見し、その原理を応用して低風から回り始めながら台風にも耐える小型で安易な風力発電装置を開発している。これは単なる風車の改良ではなく原子力のような巨大でリスクの高いエネルギー源を、分散化可能で安全な再生エネルギー源に転換することを視野に入れた取り組みの一つと言であることが紹介されていた。
最後にバイオミメティクスが目指す未来図について
人間社会のさまざまな部分にバイオミメティクスの技術が導入されると、未来の社会はどのように変わってくるか。私たちはどのようにすれば、より持続可能な社会のイメージについて知り、それに向かって進んでいくのだろう。
そのヒントとなるのが、バックキャスト手法として紹介されていた。バックキャスト手法とは、未来の社会のあり方を予測する場合に、未来に起こり得る制約を設定し、その制約の中で、「やるべきこと」を選択し決定する方法のこと。バックキャスト手法は、地球温暖化などの環境問題解決に役立つ方法として注目を集めている。私たちが望む未来の社会を実現するためには、今、何をやらなければならないかを知ることが必要であるとしている。同時に、バイオミメテシクスの導入または、展開によって、未来の社会を具体的に変革させることができるのかを示すことが出来ると解説していた。
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