昨年9月から11月にかけて国立科学博物館(上野本館)で開催された「標本の世界」展の一部が、文部科学省にある「情報のひろば」3階にて2009年1月19日から4月3日まで構成を変え展示されている。
「標本の世界」展は、博物館が標本の展示だけではなく、多くの研究者の力によって標本の収集が行われ、調査・研究によりさまざまな用途で活用されていることをわかりやすく紹介した展示会だ。今回の展示では、研究者が標本を採集する模様を紹介するビデオや、魚標本を作製する手順などと共に紹介。ほかに化石標本、貝標本、剥製標本など「標本の世界」を知る資料がコンパクトに並べられ展示されている。
会場風景 |
「ハタ」を使った魚標本の作り方 |
1 「標本とは何か」「標本の作り方」コーナー
展示されているものを紹介していこう。まずは貝標本のリュウグウオキナエビス。これは標本と採取データがいかに重要かを紹介した展示で、高価な価格で売買されているリュウグウオキナエビス。しかし、標本の採取情報がないため学術標本としての評価は得られないことを解説している。また対照的によく知られているハマグリを例に、現在では生息していない神奈川県小柴(横浜市金沢区)で1934年に採取されたハマグリの貝標本と標本ラベルが展示され、その時点で生息していたことを知る証拠として紹介、データがいかに重要であるかを知ることができる。
ハマグリの標本
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リュウグウオキナエビス |
また、海草の押し葉標本をパネルで解説したコーナーでは、海草の色をポイントに赤い紅藻類、茶色の褐藻類、緑色の緑藻類が乾燥標本とともに並べられていた。また、解説には標本の作製方法も図入りでわかりやすく紹介。
海草を紹介するコーナー |
藻の乾燥標本 |
そのはか、魚標本の製作を紹介するコーナーでは、ハタを使った魚標本の作り方模型が展示され、どの様に標本を製作するか解説パネルと合わせ解説されていた。
今回展示されているものは植物標本や魚標本だけではなく化石標本も展示されている。1971年4月東京・原宿で行われていた地下鉄千代田線のトンネル工事中に発見されたナウマンゾウの化石の一部がそれだ。この化石は東京層とよばれる約20万年前の砂質泥層から発見され、臼歯の順番とそのすり減り方から45〜50歳のナウマンゾウというところまでわかるそうだ。ちなみに牙の大きさからオスだということもわかると解説されている。
原宿から発掘されたナウマンゾウ化石
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臼歯と牙
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2 標本から何がわかるか
「標本から何がわかるか」を説明したコーナーでは、フクロウの巣を調査・研究し、ヒナが巣立つまでにどのようなものをどれだけ食べ、巣立っていくかを知ることができる資料が並べられている。これは、ペリットとして吐き出された骨などを、研究用標本といわれる動物の同定に必要な標本によって調べ、食性を知るというもの。また、フクロウが何を食べているかを知ることで周辺環境での動物の生息状況も知ることができるのだそうだ。このように標本からさまざまなことがわかることが解説されていた。
標本から何がわかるかコーナー |
ペリットを解説 |
研究用標本について解説
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同定に必要な研究用標本 |
3 国立科学博物館のことを知る
本展では標本がどのように採取され、どのような研究が行われているかを知ることができる。コンパクトにまとめられた展示から国立科学博物館のことを知るだけではなく、自然科学における博物館の重要性も知ることができる。期間は4月3日まで開催されている。
国立科学博物館の解説パネル
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展示室全景
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