埼玉県立自然の博物館にて平成20年4月1日〜平成21年2月15日まで「2008企画展多様な埼玉の生きもの」展が行われている。会場には埼玉を中心に生息する哺乳類、貝類、植物など多様な環境で生息する生き物の標本が分類ごとに分かりやすく展示されている。その中でも迫力あるワシやタカなどの猛禽類の剥製標本は必見。また小さな陸産貝類の標本の中には全長が数ミリほどしかないものあり普段気づくことがないであろう生物の標本を間近でその詳細を見ることができる展示はとても興味深い。
また今回の展示では、もともと埼玉に生息していた在来種が外来生物によってその生息が脅かされている実状や、環境の変化によって本来生息が確認されていなかった生物を埼玉の新参者として紹介、埼玉県下の生物の多様性を知る上でも大変興味深い。
それでは、そんな展示の中からいくつか気になる展示を紹介していく事にしよう。
会場全景 |
猛禽類の剥製標本は迫力がある
|
会場の全景を別の角度から
|
陸産貝類の標本が多く展示されている |
1 絶滅危惧種に指定された生きもの
企画展の会場は埼玉県立自然の博物館二階に設置されている。埼玉県立自然の博物館は今年2月に一部館内の展示レイアウトの変更が行われ、二階部分が新たに企画展示ルームになったそうだ。二階に上がり会場に入ると右回りに展示を見ていくといい。展示標本には埼玉県内のレッドリストと環境省から出ているレッドリストのカテゴリー表示がなされホンドオコジョやヤマネといった小動物、またオオウラギンヒョモンやミソゴイ、オオヨシゴイなど絶滅危惧種標本を見ることができる。
絶滅危惧種のオオウラギンヒョウモンとツマグロキチョウ
|
準絶滅危惧種のヤマネ
|
植物のコーナーでは、石灰岩地の希少種としてミヤマスカシユリやキバナコウリガンなど埼玉県内特有の地形に生息する植物のレプリカ標本が展示され実際の色や形を確認することができる。また低湿地の希少種コーナーでは現在では羽生市の宝蔵寺沼でしか自生していない食虫植物ムジナモのレプリカ標本を見ることができる。
|
|
植物の展示コーナーではレプリカ標本が並ぶ
|
ムジナモノのレプリカ標本
|
植物コーナー全景
|
埼玉県の特定県内希少野生植物種の左からチチブミネバリとチチブリンドウのレプリカ標本
|
2 在来種に影響を与える外来生物
外来生物を紹介するコーナーでは在来種に影響を与える特定外来生物のブルーギルやハクシビンなどが紹介されている。
|
|
一番左が特定外来生物のブルーギル
|
左側が特定外来生物のアレチウリだ |
|
|
3 小さな生きもので見る生物の多様性
会場中央に設置されたブースでは陸産貝類や昆虫など小さな生きもの標本が展示されている。陸産貝類のコーナーでは、モノアラガイ、マルタシニ、オクガタキセル、オオトノサマギセルなど絶滅危惧種に指定されている希少な標本を見ることができる。また蝶やトンボなど昆虫のコーナーでは各科ごとに展示が細分化されているので、個々の特徴を比較し観察する事ができる。そのはか生息域の違うオオムラサキの標本を一同に見ることができる展示では地域差による蝶の特徴の変化を見ることで種内変異を改めて再認識することができるはずだ。
準絶滅危惧種のマルタニシ |
オオムラサキノの種内変異標本 |
このコーナーで展示されている中から絶滅が危惧されている小さな生きものを紹介しておこう。
準絶滅危惧 オオムラサキ |
絶滅危惧U類のツマグロキチョウ
|
準絶滅危惧 イチモンジセセリ |
絶滅危惧U類 ベニイトトンボ
|
絶滅危惧T類 オオモノサシトンボ
|
絶滅危惧U類 アカセセリ |
またコーナー最後には環境の変化で新たに観測され始めた昆虫が新参者として紹介されている、数十年前までは埼玉県で見かけることがなかった昆虫が観測され現在の生息域分布の状況が詳しく解説されている。
1990年代後半から観測例が増えはじめたツマグロヒョウモン
|
右からクマゼミ、ナガサキアゲハ、ホソオチョウ |
4 最後に
埼玉県に絶滅危惧されている哺乳類は全56種のうち80パーセントにものぼり植物は県に生育する植物の20パーセントに及ぶということだ。もちろんすべてをこの会場で見ることはできないが多様ないきものの状況を知ることができる数少ない展示だ。
6月に展示の一部が変更されるとのことだが自然の中に生きる小さな生きもののことをしるよい機会ではないだろうか是非足を運んでみてはいかがだろう。
|