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展示会レポート 
国立科学博物館企画展 
  「琉球の植物 」
               特別講演会レポート

開催日時:
2009425日(土)14:00〜16:00
開催場所:国立科学博物館 日本館2階講堂
テーマ「沖縄の植物と人を暮らし」 佐々木健志先生 琉球大学資料館学芸員

次に琉球大学資料館(風樹館)学芸員の佐々木健志先生が「沖縄の植物とその人の暮らし」について講演された。

佐々木健志先生は普段は蜘蛛や昆虫の生態を研究されているが、専門の研究とは別に沖縄県の玩具や民具も研究されている。今回の講演では、沖縄の生活に欠くことが出来ない植物と人との暮らしを現在も残る風習や暮らしなどを通し解説が行われた。また講演会場には、実際に解説が行われた民具や玩具なども並べられ沖縄の物質文化を知ることが出来る講演だった。

1 沖縄の植物利用の特徴

「植物と人との関係について資料館で今まで研究した内容についてご紹介したいと思います。本来の分野が違うこともあり、私よりも適任者がおられるかも知ません。しかし、今日は研究者の方たちがあまり興味を持たない民俗学でもすこし隙間の部分をご紹介したいと思います。」

「沖縄の庭畑でははさまざまな植物を植え、それが生活の中で利用されています。そこでまずは沖縄の植物利用の特徴について紹介したいと思います。」


佐々木健志先生

沖縄の植物利用の特徴

「1つ目は 本土とは異なる植物が使われている点です。ここに有りますように熱帯や亜熱帯系の植物、アダンや、クロツグ、ビロウなど本土ではあまりなじみの無い植物が色んな形で生活に利用されています。」

「民族研究者の方たちのデータを基に調べると、300種類の民具が上がってきました。その約半分ぐらいが植物素材で作られています。琉球ではさまざまな生活用具を植物に依存しています。」

「さらに詳しく見ていくと木の製材を組み合わせ作った民具よりも、草本類の葉や繊維を利用した民具が多いと言うことが、1つの特徴です。」

「そのほか地域によって異なる植物利用と言うことでは、各島により植物の分布も異なります。」

「それで、それぞれの島の植物を使って作られている。また島によっては稲作が出来ない島も有り、そのような所では稲藁の利用が制限されてしまいます。」

「そこでその代わりとなる植物が色々な形で使われます。また、稲作と同じような理由で竹類があまり植栽されていない小さな島では竹の利用は少なくなります。その代わりに違う植物の利用が行われているということが有ります。」

「このほか、沖縄の場合外来植物の有効利用が行われています。古くは琉球王朝時代から、さまざまな植物が琉球に入って来ていますが。そのような植物をうまく利用して使っていると言うのが挙げられます。」

「このような植物をどの様な所で利用しているか、採取場所と利用する植物からすこし紹介したいと思います。」


2 利用する植物の採取場所


利用する植物の採取場所

コシダの採取場所

「1つは村落近くからの山野からの採取です。例えば樹木類のトウズルモドキ、コシダ、シャリンバイなどの植物をそのまま採ってきて利用するといったものが有ります。一番の典型的なパターンがコシダです。」

「そのほか、村落近くに自ら植栽をし、村共同で利用するといった場合も有ります。また屋敷周辺で植栽もしくは屋敷の中で植栽し利用する。バショウやクロトンさまざまな植物が屋敷の中に植栽されて利用されています。」

「すこし紹介していくとこれがコシダです。山の林道沿いにコシダの群落が形成さていますが結構日当たりがあまりよくない所で両辺部分が急にくの字に伸びたような所に有ります。こういったものが民具ではよく使われます。」

「そのほかトウズルモドキですね。竹があまり使われないような島では、このトウズルモドキを採ってこの樹皮を使い竹細工のような形でカゴ等が編まれたりします。」


トウズツモドキ

ホウライチク

「そのほか村落周辺の共有植栽としてホウライチクなどもあります。ホウライチクは、モウソウチクのように根茎が横に伸びていかないので周りの土地をあまり侵食していくことが起こりません。それで畑の境界や屋敷の境界などにもよく使われる植物の1つです。」「そしてアダンです。アダンも沖縄の場合、海岸の近くにたくさん生えていますが、わざわざ部落周辺に移植しちょっとしたアダンの森を造って利用すると言うことになります。」

「これは畑の近くに地元の人たちによって作られた人工的なアダンの群落です。」

「これは沖縄の農家の典型的な屋敷畑で、屋敷畑の周辺の植栽植物を図にしたものです。沖縄の玄関の所には魔除のひんぶんという魔除の垣根を作っています。皆さんよく映像などで見るのがフクギの生垣でこういったもので沖縄屋敷は台風の風雨から防いでいます。」


アダンの群落

屋敷畑の周辺の植栽植物

「それと後ろの方に有るのがアタイもしくはアタイバと呼ばれている屋敷畑です。屋敷畑には通常日常に使われる野菜を中心に植えられています。」

「このほかクロツグと呼ばれる在来の植物ですけれども、これは利用価値が非常に高く、特にリョウショウは非常に耐水性が高くて色んな形で使われています。八重山の方では特に屋敷に植えられています。ただ沖縄本島で調査すると屋敷の中で植えると縁起が悪いと言うことでこれを好まない地域も有ります。」

「あとここにオオハマボウと有りますが、これは紙として葉っぱが使われます。昔沖縄ではこの葉をトイレの紙として使われていて、この木が有ればチリシがいらないということで屋敷のすぐ近くに植えてチリシの代わりに使われていました。」

             


イヌマキの木

沖縄の屋敷畑と植栽木

「イヌマキという木は家の柱として使われています。シロアリに対する耐性が強く建材などに使われています。また、信仰的な植物として、ハマオモトと言うのが有ります。このような植物は屋敷の隅に植えることによって魔除になると言うような形で使われているものも有ります。」

「具体的な例をこれから紹介していきたいと思います。」

「フウギは生垣として使われます。これによって屋敷を暴風雨から守る役割があります。これが先ほど紹介したイヌマキです沖縄ではチャランと呼ばれていますね。屋敷の中に植えられています。これはまさにイヌマキを一本使った柱です。」

3 沖縄の植物とその利用

「沖縄の植物とその利用を大まかに分けると6つに分けることが出来ます。1つは生活用具(民具や建材)として使われる形、また2つ目は織りと染色にさまざまな形で使われ、また3つ目に食料と薬としての形としても植物が使われています。4つ目に信仰の中でも使われています。そして5番目に遊び、子供たちの遊びを中心に植物を使ったものです。たくさん有ります。

そして6つ目が藁算です。沖縄には独特の文化が有りますが、このようなものに集約することが出来ます。」


沖縄の植物とその利用

1. 生活用具

「沖縄では植物と人との関係を大きく分けると6つに分けられますが。今回は信仰の部分と、遊びと藁算などについて中心にお話していきたいと思います。」

 生活用具

「まず、1番目生活用具です、沖縄で民具を植物素材で分類し一番使われているのを調べるとビロウ、アダン、クロツグといった植物を中心にさまざまなものが民具として作られています。そのほかコシダがカゴ類を中心に使われています。」

「いくつか紹介していきましょう。これがビロウで、それで編まれたクバガサです。頭がとんがったクバガサをごらんになった方もいると思いますが、海民用のクバガサは頭が平たくなっていています。漁に出る時に漁師の方たちがかぶっていき、船に水が入った時にこれで汲み出したりすることも有ります。」

「ワラビカゴの幅は60cmぐらい有り、中には藁で編んだ座布団が敷いてあって畑に仕事に行く時にはこれを持っていって子供を寝かせていると言うことが行われているそうです。」

「あとコシダですが、非常に水に強い性質が有ります。少々の水に濡れてもまったく朽ちません。直接水をかけてもなかなか腐らない特性を生かし公園に並べられるランの鉢のカバーはこのコシダが使われています。またコシダは食器を洗うための籠、夜の間子供がおしっこをしたしたおしめを入れておくような時もに使われています。あとアダンの葉で編まれた草履などが有ります。」

「またクロツグのロープでは牛の鼻と通しのロープが通常クロツグの繊維で編まれたロープが使われています。牛の鼻も濡れていますので、このような所にもなかなか腐りにくクロツグが使われます。」

「ほかには船を係留する時などにもクロツグの繊維で出来たロープが使われています。」

 染めと織り

「2番目の織りと染めをすこし紹介しましょう。これは風樹館に展示されている芭蕉布の標本です。今から80年ぐらい前に作られたものです。この芭蕉布はもちろんバショウから作られ、芭蕉布を染める染料として染料植物のオキナワシャシンバイが使われています。」


芭蕉布

イトバショウの実

「今回の展示会でも使われている大島紬にも染料としても使われています。」


 信仰

「3番目に信仰の中の植物としてすこし紹介したいと思います。1つは仏壇や墓用に供える植物としてアマキ・イヌマキ・ドラセナ・ハイビスカスなどが有ります。あと2つ目に屋敷や畑などの魔除として使われています。稲藁・ハマオモト・ススキなどの種類ですね。祭祀としてはアダン・ビロウ・クニクサ・シマグワなどがあります。」


3信仰の中の植物

仏壇用の植物

「ちょっと具体的な例をお見せしますと、これは沖縄仏壇です。仏壇には、このように生葉を供えますが、その中でも最近の仏壇に供える生葉の一番大きなものがクロトンです。」

「クロトンは沖縄ではごく一般的な仏壇の花として使われています。クロトンは日持ちがするので刺したままでも長く持つんですね。」

「先ほど紹介しましたマサキとかドラセナなども使っています。ドラセナに関しては文献を調べると1700年代に描かれた琉球の植物図の中山花木図に琉球についての絵図が有るんですが、ここにすでにドラセナが出てきます。ドラセナに関してはかなり古くから色々な形で入ってきているのかも知ません。」


左マサキ  右 ドラセナ
 
中山花木図

「またお墓の周りにもドラセナ・クロトンなどが生えています。お墓でお参りをする時にはこのような所から枝を切って使う事が行われています。」

「これは、海岸に自生しているハマオモトと言う植物です。屋敷や畑などの魔除などに使われている植物です。ヒガンバナの仲間で毒を持っています。玄関の入り口にハマオモトを植え結界を張って魔除にすることが宮古島を中心に行われています。」


ハマオモト

ススキのサン

「そのほか沖縄で広く使われている魔除の植物の1つでススキのサンです。サンと言うのはススキの先を結んで立てます。立てることによって魔除になったり自分の所有を表したりといろんな形で使われています。」

「単にススキの先を割ったり結んで使用します。またススキを割らずに単にサトウキビの葉を直接巻いただけのものも有りそのような物も魔除のサンとして使う場合も有ります。」


右 サトウキビを直接巻いたもの

サンザシとゲーン

「私が沖縄に来て30年ほどになりますが。その当時は、このサンがいたるところにありまいたが、今はどんどんすくなくなっています。そこで調査のため沖縄の今帰仁村に行って調査しました。」

「これは調査に協力してい頂いた87歳のおばあさんのお宅にお邪魔して写真を取らせて頂いたものです。これはサンザシと言って屋敷に悪いものが付かないよう祈りする時のものです。それに使うサンですがススキを丸めたサンであったり、柱にサンを刺したりし魔除に使います。」


ゲーンの作り方

ゲーンの作り方 行程

「おばあさんにお願いして実際にサンを作って頂きました。ススキも屋敷の裏庭に生えているものをそのまま使います。87歳と思ないぐらいカマを上手に使って作られます。このようにサンを作り、最終的には玄関の両脇に2本サンを立てて真ん中にススキの先を結んだものをおいて結界を作り魔除になるんですね。」

「そのほかの屋敷の魔除としてススキのサンにクワの葉を付けたてものがあります。ススキの葉だけでも魔除の効果が有るんですが、さらにクワの葉を入れることによって雷を落ちるのを防いでくれると言う言い伝えがあるんですね。


玄関に置かれたススキのサン

ゲーン

「このようなサンなんですが今から20年ぐらい前に私の琉球大学の同期の一人がサンの調査をしていました。その時に台湾でも同じようなサンを作る人たちがいます。しかし台湾では琉球のように呪術的なことでサンを使う事より、生育を表したりする1つの記号的な役割で使われていました。」

「それがおそらく黒潮文化にのって沖縄に渡ってきたのかは分りませんが、沖縄では呪術的な部分をもって使われてきたのではないかと言う話をしております。」

「サンに関してはあまり民族学者の方が研究されておらず、まとまった文献が私自身見つけられません。非常にユニークなそれも南の方の民具では有るのですが失われつつあるものです。もしご興味を持たれる方がいれば是非調べていただければと思います。」


 食品と薬

「4つ目に食料としての植物も様々なものが利用されています。食料以外にもオオハマゴウやシマグウなどの葉っぱを水中に引き込んで緑肥として畑などで使われています。」


アダンの新芽

オオタニワタリの新芽

「食料で変わったものを紹介します。アダンの新芽です。石垣島で販売されているもので、すこしえぐみが有るんですが、竹の子のような食感で食べられています。それとオオタニワタリの新芽です。実際に石垣島のおばあさんが収穫している所を見せてもらいました。これはおばあさんの家の庭です。これも屋敷畑として栽培されている場合が多いです。地面に生えているオオワニワタリです。それの新芽ですね、まだやわらかい部分を折って収穫をします。そしてゆでてマヨネーズを付けて食べると大変おいしいです。」


オオワニワタリの採取風景

ヒカゲヘゴ

「ヒカゲヘゴは八重山地方を中心に食材として利用されています、高さが2m〜3mぐらいになります。この季節新芽が伸びてきます。伸びてきた新芽を取ってまず外の毛を剥きます。そして、下の部分の皮を剥いてゆでてオカカをかけて食べると水炊き大根のような感じでさっぱりした感じでとてもおいしい食材です。」

「そのほか、モロコシソウこれも食材としてよく利用されています。サクラソウ科の植物です。この植物は生木の時はほとんど匂いがしません。取ってきて蒸し器で蒸して乾燥させると独特の香りが出て、すこしカレー粉のような香りがしてきます。この香りが虫除けになります。沖縄では、昔からおそば屋さんの天井にぶら下げてあったり屋敷の中の柱にぶら下げてあったりします。これは先ほどのおばあさんの柱にぶら下げてあったモロコシソウです。」


ヒカゲヘゴの調理風景

モロコシソウ

「それから沖縄のおばあさんは、これを箪笥の中に入れて虫除けにつかいます。だから沖縄の「お婆の匂い」はこの匂いがします。沖縄の人にこの匂いをかがせると「お婆の匂い」だと言います。」

「イジュの樹皮はサポニンを含み。魚毒漁に利用されます。サンゴ礁の水溜りにこの樹皮を叩いて付けて浮いてくる魚を取って食べると言った具合です。」


モロコシソウの虫除け

イジュの魚毒

 子供の遊び

「5つ目に子供の遊びと植物です。」

「手作り玩具として使われたり、おやつとして実を食べたり葉っぱを食べたりするんですが、今日は手作り玩具を紹介します。」


子供の遊びと植物

ソテツの玩具

「ソテツを材料にした玩具は、ソテツの実の人形、ソテツの葉の虫かご、ソテツ人形、それとマーイ(琉球手まり)などが有ります。」


マーイの作り方

アダンの玩具

「まず手まりです。これの何がソテツかということですが中がソテツなんですね。沖縄のマリが出来る過程です。」

「これは榛原町に居られる80歳のおばあさんに頼んで作ってもらったものです。ソテツの綿の部分を集めて芯の作り周辺を糸でぐるぐる巻きにします。」

「さらに黒い糸で巻いたあと、刺繍をするとマリになります。非常に弾力性が有ってとても弾みます。昔は綿の部分だけを丸めて遊んでいたようです。」

「さらにこの中に石を入れて布でかぶせてボウルを作って野球をやるとバットに当たったらよく飛んだそうです。そのようにソテツは使われています。」


クロツグの玩具

クロツグのそり

「そのほかでは、アダンが有ります。トンボや星ッコロ、ハブグァー、風車などです。」

「またクロツグも、金魚、やバッタ、ヘビ等あり、西表ではこのヘビが猫じゃらしとして使われているそうです。」

「クロツグの葉を使ってそりも作ります。この上に子供を乗せて遊ぶものです。葉の繊維が強く、乱暴に扱っても切れたりはしません。」

「これは、当資料館にもいくつか作ってありまして。子供たちが中の広い所でこれを使って競争しています。」

「その他の玩具として、ガジュマルの葉の蝶や、ディゴの葉の凧、オオハマボウの茎の刀ですね真っ直ぐなものを選んで石で皮の部分を叩くとすぽんと抜けるんですねそれを剣にして遊びます。ビロウの葉柄のふくぎの葉の船などこのようなものが有ります。


そのほかの玩具

セミ捕り網

「クワズイモの葉っぱを使った玩具を紹介しましょう。クワズイモやバナナの葉を使った蝉取り網です。先が細くなった筒状になったもので蝉にかぶせると蝉が羽ばたけず、筒の中に蝉が入ったまま動けずつかめることが出来るといったもので、市販されている網よりもよく取ることが出来るのではないかと思っています。」

「実は昨年環境省の調査で石垣島出身の調査印の方がいたんですけれども、この蝉取り網を使ってたくさんの蝉を採取されていたほどです。」

「それと、ホタル提灯と言うのを紹介しておきましょう。日本には50種類ほどのホタルの種類がいて、沖縄ではその半分ほど生息しています。そのほとんどのホタルが陸生で一年中、成虫や幼虫が発生しています。子供たちは、そんなホタルを使い色んな形で遊んでいます。」


カボチャの花

ホタル提灯

「ホタルの生態調査のついでにそのようなホタル遊びについて調査しました。」

「これはカボチャの花を使ったホタル提灯です。カボチャの花が夜しぼむとその中にホタルを入れて遊のですが光るとぼやっとした明かりになります。」

「また沖縄ではハマオモトの茎を作って風船を作ります。ハマオモトの茎を上手に剥いて上と下の部分を縛ると風船になります。この中にホタルを入れ長時間露光を行うとこのようにきれいなホタル提灯が出来ます。」

「宮古島のおばあさんに教えて頂いたんですが、子供たちの間で出来るだけ長いものを使って蛍光灯と言って遊んでいたようです。」

「あと、テリハボクという八重山の地方に多い植物で防風林なんかに使われますが、その実に穴を開け繋ぎ合わせて素朴なホタル提灯を作ります。」


テリハボク

テリハボクのホタル提灯

「変わった所では、沖縄では豚の餌に使っていたシルイモと言われる白っぽい芋を自宅の畑で栽培していました。」

「その芋を使ってゆでて練ってその中にホタルを入れます。ホタル団子と呼んでいますがこれもふたを閉めホタルが光ると淡い光を放つホタル団子が出来上がります。」


シルイモ

ホタル団子


  藁算の歴史

「最後に藁算について紹介していこうと思います。」

「今から4,5年前、私どもの博物館に標本が有ったことも有り、調べてみることになりました。その中で民俗学者の方に連絡をし復元することになりました。」

「藁算その物が朽ちやすいもので原資料があまりの残っておりません。今残っているのが、東京大学と大阪の民俗博物館に有るぐらいで実際に実物を見る機会が少ないものです。」


藁算

八重山蔵本絵師画稿集

「藁算と言うのはもともと琉球王国時代から明治のころまで、庶民が物品の記録や計算機として使った植物素材の民具です。琉球王国時代は政策として一般の方たちに読み書きをわざと教えず出来なかったんですね。」

「その方が統治しやすかったと言われていますが、実は、生活の必要に迫られてこのようなものを使ったと言われています。明治頃までは離島などでも使われていましたが、その後、識字教育が進み現在では藁算を読んだり作ったりすることが出来なくなってきています。」

「藁算にはさまざまな植物が利用されています。161種の藁算を調べると、一番多く使われているのが稲136、シチトウ、イ、フトイ、ビロウ、アダンの気根(アダヤシ)、ゲットウ、テリハノブドウなどが使われて言います」

「八重山蔵本絵師画稿集(18〜19世紀)に書かれたこの画集からも当時の藁算が使われていることを知ることが出来ます。」


  藁算の用途

「藁算の用途ですが、1・税として収める作物や布の量の記録、2・炭や薪などの荷物の受け渡しの記録、3・家畜の取引の記録、4・仕事の出欠などの記録、5・切り出す木材の寸法の伝達、6・計算機、7・告示(標札)、8・祭事などです。」


藁算の用途

結びの読み方

「藁算の読み方ですが、典型的な読み方を例に挙げると、まず、藁一本出ていると1です、藁に結ぶ目を付けていくと数が増えていきます。

5つ結び目が有るものが5を表します。3つ結んで輪にしたものが3、さらにゴスンヒョウと呼ばれている結びか方で藁の上の部分に輪を作ったものを5。さらにその下に結び目を付けていくと数が増えていき5のプラスに2つの結び目で7になります。さらに藁の太さでもまた数や桁が変わります。」

「このようなものを組み合わせて物の数を表し、計算機として使われていました。」


米の量の記録
「実物を使われていたものを紹介しましょう。これは米の量を表したので稲藁を材料にし128石8斗6升2号と読みます。この量をこれだけ納税しなさいとか納税しましたと言う形で記録されます。」


鶏算
「これは鶏算と呼ばれるユニークな藁算です。これは当時首里の役人が離党に視察に来るんですがそのとき接待用に鶏を供出した家を記録するものです。これは輪の一つ一つが家を表していて、輪の上に藁が飛び出た家が鶏を出した家を表し、鶏を供出した家を知ることが出来ます。」

「どれぐらい布を税金として収めないと言う時の藁算が有ります(貢布割賦記録)。これはクワの葉っぱがそれぞれの家を表してそれぞれの家にこれだけ収めなさいと言うことが記されています。

「戸数計算の藁算では甲組49戸、乙組43戸のそれぞれにわけ甲乙量組の合計が92戸ということを表しており人頭税などの徴収などに利用されます。」


貢布割賦記録

戸数計算

「質屋で使われる質物記標の藁算では、この着物が何月何日に入れられたかを知ることが出来ます。これは5月に質入し123貫または12貫300文貸しましたよと言うことが分ります。このように非常にさまざまな藁算が使われておりました。」

「しかし現在では、これを読める方がいなくなり、また物が無くなったと言うことで非常に研究が難しくなりました。」

「たまたま与那国に行った時に保存されていた物を紹介しましょう。これは甕から汲み出した酒の量を記録したものです。1升汲み出すごとに藁の所を1結していき数を記録していくものです。この場合4結有りますから4升取り出しましたよと言うことが記録されています。」

「非常にさまざまな形で藁算が使われていたことが分ると思います。しかし現在では、非常に研究が難しくなっている状況が有ります。」

「先ほど横田先生が琉球の植物が絶滅の危機に瀕しているお話をされていましたが、沖縄では、われわれが日ごろ研究している生物以外でもこの文化的な部分でも絶滅しそうなものがたくさん有ります。」

「今回調査して聞き取りが出来たのが80歳以上の方たちです。先ほどの今帰仁村のおばあさんもご両親が早くに亡くなられておばあさんに育てられました。そのおばあさんが色んなことを直に伝え辛うじて色々なことを知っているんです。そうでなければ私の年の方でも知っているは少ないよと言うことでした。」

「沖縄の民俗学は精神文化の方は研究が活発に行われ成果が出ています。その反面、物質文化を扱う民俗学の方はあまり研究する方がいません。また生物研究と同じようにものが無ければ研究は困難です。」

「さらに植物素材のものは今この時期に残っているものだけでもかき集め研究を進めておかないとこのようなすばらしい沖縄独特の文化がまったく日が当たらない状況になると言うのが現状です。是非これから沖縄に旅行にいかれた方がいればこのような視点で見て下さい。」

「琉球に行かれた時にはは是非風樹館においで下さい。」

と最後に講演を締めくくられた。

講演会場の後方に設置された展示ブースには講演で解説されていたホタル提灯やススキのサンなどが並べられ普段身近に見る機会が無いものばかりで講演後来場されていた方々が興味深く見入っていた。


講演会場に並べられた民具や玩具





国立科学博物館 企画展 
   「琉球の植物」展

期間:平成21年3月24日〜平成21年5月17日 
(休館日は博物館ホームページを確認ください。)

入館料:一般・大学生/600円(団体300円)・高校生以下無料(団体は20名以上)

お問い合わせ 国立科学博物館  電話  ハローダイヤル 03-5777-8600 
展示資料


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